いいフォームで走ることは、怪我の防止やタイム向上に非常に重要なポイントです。
今回は、コニカミノルタ陸上競技部の大山選手をナビゲーターとして、ビギナー、上級者お二人のランナーのフォームを解析し、改善点を見つけていきます。
コニカミノルタ独自のFORXAI(画像を中心としたIoT/AI技術)を応用し、陸上競技部の知識や経験を取り込んで開発したランニングフォーム解析システムでお二人のフォームを解析していきます。
今回のナビゲーター:大山憲明選手
先日の別府大分毎日マラソンでマラソンデビュー。3000m障害、駅伝、マラソンと今後も活躍が期待される。
Runalytic®(ラナリティック)の開発では、陸上競技部の知見と開発チームの技術を結ぶという重要な役割を担った。
モニター:松本彩花さん
コロナ禍での運動不足解消のため、ランニングを始めたいと考えているビギナーランナー。
「走り始めるにあたって正しいフォームのポイントが知りたいです」
モニター:伏木蒼太郎さん
中学から陸上部。市民ランナーとしてフルマラソンを2時間20分台で走る上級ランナー。
「フォームの改善点を知って故障リスクを抑えたいです」
いいフォームで走ることはなぜ重要?
初心者にとってもトップ選手にとっても、よりよいフォームで走ることはとても大切だと言われています。いいフォームを身につけることはなぜ大切なのでしょうか。
大山
我々実業団の選手も日頃からフォームを意識して走っています。フォームに問題があると走りの効率が悪くなるだけでなく、怪我のリスクも高まります。いいフォームで走ることを普段から意識することは、怪我の防止とタイム向上に非常に重要なんです。
では、よいランニングフォームとはどのようなものでしょうか。
大山
大きなポイントは姿勢と上下動、腰の高さ、そして地面についていない方の足の運び(遊脚の流れ)の4つです。例えば猫背だと歩幅が狭まってしまいますし、後ろに反りすぎるとブレーキになる。上下動が大きすぎるとエネルギーのロスが大きくなって無駄な力を使ってしまうんです。
しかし、自らのフォームを改善するというのはなかなか難しいものです。
伏木
自分でも動画を撮影するなどして、フォームをチェックすることはあるのですが、問題がどこにあるのか、またどう修正したらいいのかがわからないんですよね。
松本
初心者の私は、そもそも正しい走り方自体、見当もつきません。
大山
ですよね。そこで今日はコニカミノルタ独自の画像を中心としたAI技術を応用し、開発したランニングフォーム解析システムを使ってみたいと思います。これには陸上競技部が積み重ねてきた知識や経験も取り込まれているんですよ。
動画を撮影するとAIが即時にフォームを解析
大山
まずは、僕が走ってみて、その解析機能をお見せしますね。
大山さん自らがランニングマシンで実演。その軽やかな走りを5秒間撮影すると、即座にフォームが解析され、結果がモニター画面に現れました。
大山
こんな感じで単なる動画だけではなく、骨格まで見えるようになっているんです。また、左側にはフォームにとって重要な4つのポイントが数値化されて出てきます。
松本
すごい!
伏木
僕のもこんな風に見えるんですか?やってみたいです。
ビギナーランナー松本さんのフォームを解析すると?
解析動画を見て興奮の2人。今度はその2人が試す番です。まずは松本さんの走りから。
大山
上下動は10cmで無駄のない走りだと思います。姿勢も問題ないですね。
さっそくフォームについてコメントする大山選手。松本さんは会社ではバドミントン班に所属し、趣味でボルダリングもやっているスポーツウーマンだけに、ランニング初心者とはいえ安定感のある走りです。しかし、松本さんご自身は、分析結果の赤字部分が気になっている様子。
松本
この「腰の高さ」の赤字は何でしょうか?
大山
ここでは最初に述べた4つのポイントが数値化されていて、修正が必要な数値は赤字で表示されるしくみになっています。松本さんは接地した時に膝が曲がりすぎて腰が沈んでしまっている状態ですね。膝を曲げることで着地の衝撃を受け止めている状態で、走る筋肉がまだ充分についていないランナーや、長距離を走って筋肉が疲労してくるとこのような状態になってしまうんです。できれば膝ではなくお尻の筋肉で受け止めた方がいい。そのためには脚や骨盤周りの筋力を鍛える必要があります。
もうひとつ、「遊脚の流れ」の赤字も気になります。これは、地面から浮いている方の脚の後ろ方向への流れ方を数値化したもの。
大山
松本さんの場合、ちょっと後ろに流れすぎてしまっているので、それを引き戻すのにエネルギーを使ってしまって効率が悪い走りになっています。
次に大山選手と松本さんの動画を並べて同時に見てみました。着地の瞬間がぴったり合うように速度が自動で調整されるので、2人の走りの違いが一目瞭然でわかります。
松本
並べて動画を見てみると、足の運び方が大山さんと全然違いますね。あと、自分の右足と左足で着地の仕方が全然違ってることにも気づきました。
ちなみにこの機能は、自分自身の過去の走りと現在の走りを比較する際にも非常に有用だそう。
大山
開発のために継続的に自分のデータをとっているんですけど、調子のいい時の走りと悪い時の走りの差が驚くほど顕著にわかるんです。
松本さんのフォーム改善ポイントまとめ
脚や骨盤周りの筋力を鍛え、お尻の筋肉で着地時の衝撃を受け止める
足の運び方を改善して、エネルギー効率の良い走りを
上級ランナー伏木さんのフォームの癖も明らかに!
次はマラソンを2時間20分台で走る伏木さんの番です。松本さんと比べて力強くバネのある走りが特徴的な伏木さんのフォーム。骨格や筋力の違いが感じられます。
大山
バネのある走りですね。それでいて上下動は許容範囲内に収まっています。バネを推進力に活かせているということですね。
一方の伏木さんが着目したのは「体幹・姿勢」の数値。
伏木
全体がマイナス5となっているのは後傾してるということですか?
大山
後傾というよりも、足の着地点に対してのマイナスなので、体幹より前で着地しているということになります
伏木
実は、太ももが疲れやすいんです。地面を引き寄せる感覚で走ってしまっているのは自分でもわかってたんですけど、こうやってみると明らかですね。
大山
これは、結構エネルギーを使ってしまうので効率が悪くなってしまっていると思います。理想は体幹の真下での着地。それができると力を使わずに体を前に運べるようになりますよ。
角度1度、長さ1cmといえばわずかな違いにも思えてきますが、長い距離になればなるほど体への負担になっていくもの。解析結果で唯一赤字が出ている「腰の高さ」に関しては、着地点が前に出過ぎていることで体が沈み込んでしまうことと関係している、というのが大山さんの見立てです。
大山
動画を見る限り遊脚の引きつけはしっかりできているので、着地位置を改善することで、より推進力を得られるようになるはずですよ。
伏木
全部つながっているんですね。伸びしろがいっぱいだ(笑)。でもこうして細かく分析して見てみることですごく納得がいきました。
伏木さんのフォーム改善ポイントまとめ
理想は体幹の真下での着地。それができると力を使わずに体を前に運べる
着地点を改善することが、腰の高さや推進力の改善につながる
Runalytic®によって顕著に見えてきたそれぞれのフォームの課題。
でもどうやって改善したら・・・?次回は宇賀地コーチが登場して、おふたりのフォームに鋭く切り込みつつ改善策をご紹介します。お楽しみに!
今回ランニングフォームを明らかにしたのは、コニカミノルタ独自のFORXAI(画像を中心としたIoT/AI技術)を応用し、開発したRunalytic®です。
線で単純化することによって体の傾きや膝、股関節の角度などをよりわかりやすく示します。首、耳、目、肩、ひじ、膝、腰など、18箇所の部位をリアルタイムで骨格として表示し、その位置関係から、フォームを評価しています。
コニカミノルタが培った画像AIの技術を使うことで人の姿勢を正しく表すことが出来ます。
このRualytic®の開発には陸上競技部の大山選手も関わっており、姿勢の良し悪しを判断する重要な部分に経験が生かされています。