まず、2019年度を最終年度とした3年間の中期経営計画「SHINKA 2019」を振り返ってみたいと思います。「SHINKA 2019」の業績目標の組み立ては、既存事業で競争力を維持して売上高とそれにともなう利益を確保するとともに、製造原価・サービス原価・管理間接費を削減するなどして利益を創出し、当社の事業転換とポートフォリオ転換を成し遂げるための新規事業投資を続けたうえで、最終年度に営業利益750億円、親会社の所有者に帰属する当期利益500億円を目標とする、というものでした。
私は、2年目を経過するまでは最終年度の業績目標を狙える経営をしてきたと思います。主力のオフィス事業は市場規模が伸びないなかで、2018年度にはA3複合機の販売台数が過去最高を記録するなど、計画以上の売上・利益で通過しましたし、プロフェッショナルプリント事業は、計測機器の技術を応用した当社ならではの価値提供が貢献し、売上・利益を伸ばしました。計測機器はスマートフォン需要をしっかりと捉え、機能材料は新規フィルムで巻き返し、これらを含む産業用材料・機器事業は、1年前手繰りで中期業績目標を達成しました。既存事業の健闘により新規事業への投資を続けることができ、新規事業の売上高は伸長することができました。例えばバイオヘルスケア事業は、買収前にはなかった新たなビジネスモデルで伸長する形を創ることができました。これらの結果、新規事業に大きな投資を続けながらも、ROEも目標(9.5%)を狙えるまで改善しました。

しかしながら、最終年度2019年度に状況と実績が一変しました。この期は、欧州ならびに米国の景気が下向くことが予想されたため、通期業績目標が中期経営計画最終年度の業績目標には届かないことを取締役会も了承してスタートしましたが、第1四半期、第2四半期に自社要因により躓きました。新製品による商品ライン総切り替えがオフィス事業の通期目標達成の主要施策だったのですが、新製品の生産立ち上げに手間取り、生産損益が悪化し、販売に貢献できず、計画していたコスト低減活動が滞るという悪循環に陥りました。この間、取締役会議長として、社長の了解を得て、オフィス事業を含む業績未達事業に対し、取締役会の場とは別に直接ヒアリングを実施し、そこで得た気付き事項を社長に報告し、状況立て直しの参考にしてもらいました。
第3四半期になって本来の四半期実績を取り戻し、第4四半期での挽回を期待したものの、新型コロナウイルス感染症の発生にともなう影響を中国、続いて全世界的に受け、海外比率が高く、期末追い込み型の当社にとって大きな痛手となり、通期業績見通しを大きく下回る最終年度となりました。
自社要因による業績未達事業について、是正策が取られることが次期中期経営計画策定の大前提ですから、取締役会の場を通じて、戦略面、人事面、組織体制面、組織運営面などの是正策が取られたことを確認しました。
以前から、「期末偏重の事業運営は非効率であるから平準化すべき」との指摘を社外取締役から受けていました。今回、期末偏重は業績未達リスクも極めて高いことが明らかになったわけであり、執行陣の是正に向けた取り組みを、取締役会としても注視していきます。

「SHINKA 2019」では、2021年度までの5年間で、「ビジネス社会・人間社会の進化のために新たな価値を創造し続ける企業」を目指すことを掲げました。これについては、この3年間、当社の諸活動において、一貫性を持って徹底が図られてきたと思います。関連して、「お客様企業の潜在的課題を先取りし、共に解を創出する」「全社を挙げて(One Konica Minoltaとして)業種・業態別にお客様企業のトランスフォームを支援する」を掲げました。前者については、新規事業を含めた全事業部門でこのアプローチが浸透してきたと思います。一方、後者については、この3年間はまだ消化不良の感がします。具体的な取り組みが限定的であったと思います。これに対し、執行陣は、次期中期経営計画策定過程において、事業ごとに、具体的にどう行動すべきかを示しました。また、新型コロナウイルス感染症の発生後、当社の顧客企業が業種・業態別にどのようなデジタルトランスフォーメーションを望んでいるかがかなり具体化してきました。これらのことから次の2年では、目標に近づけるものと見ています。
当社は以前から、経営ビジョン「グローバル社会から支持され、必要とされる企業」につながる、ESGを重視した経営をしてきましたが、「SHINKA 2019」においても、「中長期的な企業価値向上のためのESGの強化」を掲げました。その実践のために、執行陣は社会的価値・経済的価値の両面から見た当社の重点課題として6つのマテリアリティを定めてこれらに取り組み、世界的なESG経営アセスメントにおいて引き続き高い評価を得ました。取締役会としても、関心を持って取り組み状況を確認し、意見を述べてきました。

2020年4月に、経営の基本方針の一つである長期の経営ビジョンを取締役会での審議のうえ、承認しました。「当社は何のために存在するのか」という社会的存在意義を再定義したうえで10年後を描きたいとのことで、取締役会としては、執行側が若い世代の意見も取り入れて従業員の納得感の得られるビジョンに至ったのであれば良しとする、という考えで審議を進めました。審議の過程で、「企業は社会とともに歩む存在である」を押さえてくれていることを確認しました。私からは、当社のDNA(当社が大きな変化を乗り越え飛躍の拠り所としてきたDNA)について、アドバイスしました。
2020年度を初年度とする中期経営計画の審議も進めてきましたが、新型コロナウイルス感染症の発生により、事業環境の前提が大きく変わったため、変化に対応した中期的経営の舵取りに関する方針を執行側が速やかに策定することに変更しました。もともと、ペーパーレスの本格化に備え、「Workplace Hub」という製品を中心としたDXソリューション事業の貢献を次の3年で急ぐよう求めていましたが、新型コロナウイルス感染症の発生により、さらにスピードを上げる必要が出てきました。
「SHINKA 2019」における「Workplace Hub」の事業貢献の進捗は、取締役会の期待を下回りました。その最大の原因は、基本となるソフトウェアの開発遅延でしたが、ようやく本格販売できる状態になりました。DXソリューション事業の目に見える事業貢献の進捗を投資家に示すことが、当社に対する評価を変えるためにも必須であり、取締役会にとっての今期の重要な監督対象でもあります。

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