コロナ禍で社会が大きく変動するなか、当社のリスクと機会を再定義

2020年初頭から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界各国の社会・経済に多大な影響を及ぼすと同時に、人々の働き方やライフスタイル、価値観などの変化を大きく加速させ、当社グループの事業にも、大きく影響を及ぼしました。これら社会変化や人々の行動変容により、今後の当社グループにとっての新たなリスクと機会が顕在化した1年であったと感じています。
リスク面では、テレワークの拡大・定着によりオフィスへの出社率が低下し、プリントレスの流れが加速しました。これは当社がもともと想定し、徐々に進みつつあった構造的変化が、コロナ禍によって加速したと認識しています。当社ではプリントレスの潮流を見据えて、早くからオフィス事業においてソリューションビジネスやITサービスへの転換を進めてきました。また、イベントの開催中止や店舗の休業などにともない商業印刷需要が激減しましたが、これはコロナ禍での一過性の現象であり、感染が収束した後には、特に当社が手掛けるデジタル印刷への需要が回復していくものと想定しています。
一方、コロナ禍によって、人々の働き方や暮らしにおける「個別化・分散化」「リモート・非接触」といったキーワードで表現できる行動の変容が加速し、「安全・安心」「健康」に対する社会の要求が高まりました。私は、これらの社会の変容は、当社に新たな事業機会をもたらすと確信しています。例えば、テレワークの普及にともない情報セキュリティーの重要性が一層高まっていますが、この1年、当社の高度なセキュリティー技術やデジタルを活用したワークフロー変革の提案が、さまざまなお客様から求められ、当社のソリューションへの評価が高まっています。また、さまざまな業務の現場において「感染」や「密」を回避するための方法が模索されていますが、当社の画像診断による検温スクリーニングサービスや、病院における遠隔診療、工場における検査工程の無人化を実現するサービスなどは、多くの引き合いをいただきました。さらにコロナ禍によって人々の健康意識が高まるなかで、早期診断や個別化医療を支援するサービスも着実に成長している手応えを感じています。

長期的な成長を実現するために不可欠な
2つのポートフォリオ転換を完遂する

当社が持続的な成長と企業価値向上を果たしていくためには、こうしたリスクと機会も踏まえながら、事業構造改革を確実に実行していかなければなりません。それを完遂させるのが、CEOとしての私の最重要課題です。2020年度から3ヵ年中期経営計画「DX2022」を推進していますが、その基本方針は「デジタルトランスフォーメーション(DX)により高収益のビジネスへと飛躍する」、そして「真の社会課題解決企業へと転換していく」ことです。これらの実現に向けて、「2つのポートフォリオ転換」を必ずやり遂げる決意です。
一つ目は、オフィス事業を、従来の複合機中心のビジネスモデルからデジタルワークプレイス事業へと大きく転換することです。コロナ禍を経て、それまでの事務所に社員が集中する働き方から、テレワークが広まり、社員が分散した状態で働くことが常態になりつつあります。企業はそうした環境でも情報セキュリティーを担保し、ワークフローを効率的に進めることが急務となりました。当社が提供する「Workplace Hub(ワークプレイスハブ)」は、クラウドとエッジを連携させて、新しい情報セキュリティーのあり方を提案するソリューションであり、こうしたニーズにきめ細かく対応できます。また、企業や政府・自治体においても、紙の書類による申請・承認業務のワークフローをデジタル化する動きが活発化しつつあり、これらのドキュメント電子化についてもセキュリティー技術を活かして積極的に取り組んでいきます。さらに、中小規模のお客様のITインフラを一括管理する「マネージドITサービス」を、欧米を中心に展開してきましたが、この事業も一層強化していきます。「セキュリティーで当社の強みをつくる」――これを強力に推進していきます。
そして二つ目は、現在の売上高の約5割を占めるオフィス事業への依存度を下げ、インダストリー事業やヘルスケア事業の成長を加速させる全社的な事業ポートフォリオの転換です。インダストリー事業のセンシング分野では、当社はディスプレイ向けの計測器で、世界トップのポジションを確立しています。その強みを活かし、ディスプレイ領域での事業をさらに伸ばしていくことはもちろん、ディスプレイ以外の新領域――自動車向け外観検査や食品・医薬品関連の成分検査などの領域へ事業を拡大していきます。また画像IoT分野では、ドイツのMOBOTIX社のエッジ処理型のインテリジェントカメラをベースに行動を検知・解析する技術を確立しています。このAI(人工知能)ネットワークカメラや各種センシングデバイス、解析ソフトウェアなどを組み合わせ、新しいプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」として展開しています。多彩なパートナーの技術や製品と連携しながら、プラント、倉庫、物流エリアのモニタリングをはじめ、顔認識と連動させ体温を自動計測するサーマルカメラ、介護施設での見守りサービスなど、さまざまな現場における「安全・安心」や「非接触・省力化」のニーズに応えていきます。
ヘルスケア事業では、当社は早期診断領域に強みを持っているため、その分野でさらなる成長を目指していきます。当社が得意とするデジタルX線画像診断システムは、静止画から動画でのリアルタイム撮影へと進化しており、その動画とAIによる動態解析を組み合わせることで、医師による、より正確な読影・診断を支援できるようになりました。世界に先駆けて提供しているこの当社の技術は、医療現場からも高い評価を受けており、医療現場の負担軽減と早期診断の実現に貢献しています。またプレシジョンメディシン分野では、米国子会社のAmbry Genetics社が遺伝子検査、Invicro社が画像診断の領域で高い技術を有しています。その強みを活かして、健常者向け遺伝子検査サービス、創薬支援サービスを展開します。加えて、これまで蓄積してきた遺伝子や診断画像などのデータを統合したマルチオミックス・プラットフォーム「LATTICE(ラティス)」の提供を開始します。このように、さまざまなアプローチを通じて早期診断、早期治療を支援し、人々のQOL向上に貢献していきます。

「転換」の実行スピードを加速させるため
マネジメントシステムの再構築に着手

当社では、これら2つの転換の最終ゴールを2025年度に設定していますが、そのマイルストーンとして中期経営計画「DX2022」の最終年度である2022年度までに一定の成果を出すべく、研究開発や人財などの経営資源をこれらの成長領域に大きくシフトさせます。一方、転換の実行スピードをあげることは、前中期経営計画期間中にできなかった大きな課題と認識しており、マネジメントシステムの抜本的な見直しも進めます。そのために、この数カ月間、私自身の手で当社のマネジメントシステムを総点検して課題を洗い出しました。現在はその課題解決を含めた再構築に取り組んでいるところです。
マネジメント改革の大きなポイントの一つは、OODA(Observe=観察/Orient=状況判断、方向づけ/ Decide=意思決定/ Act=行動)ループの導入による意思決定と行動のスピードアップです。昨今のように変化が激しく先の読めない事業環境においては、じっくりと計画を練ってから実行に移すよりも、「何を成し遂げたいのか」を明確化したうえで、現状の情報から最善の判断を下し、即座に実行に移す――OODAループを回した方が確実に目標達成に近づけるはずです。この新しい意思決定のフレームワークを効果的に運用していくため、各事業現場からのビジネスレポートの収集・分析方法の検討や、会議・意思決定の仕組みの見直しなどを進めています。同時に、スピーディーに経営判断をしていくために、各部門の自律性が極めて大切だと認識しており、今後はより事業現場に近いところに積極的に権限委譲していく方針です。
もちろん、2つの転換を加速させるブースターとして、DXへの取り組みの一層の強化も欠かせません。当社では、各事業のビジネスをデジタルで進化させ、お客様への提供価値の最大化を図る「ビジネスDX」と、事業に横串を通して全社的なレベルアップを目指す「オペレーショナルDX」の2つの側面からDXを推進しています。「ビジネスDX」では、お客様のビジネスプロセスを俯瞰してお客様自身も気づいていない課題を見える化し、最適な解決策をお客様とともに導き出して、ビジネスプロセスやビジネスモデルの革新を支援します。今後も当社の強みであるイメージング技術にAIやIoTを組み合わせるのはもちろん、さまざまなパートナーの技術・サービスとの連携が可能なプラットフォームを構築し、幅広いお客様にソリューションを提供していく計画です。一方、「オペレーショナルDX」でもマレーシア工場で構築したデジタルマニュファクチャリングの他工場への展開、SCMではAIを活用した高精度なフォーキャストの実現、フィールドではお客様に提供するメンテナンスサービスの最適化などに取り組んでいきます。

サステナビリティを経営戦略の根幹に据え、
中長期的な企業価値の向上へ

「DX2022」の策定にあたり、当社は10年後の2030年の社会のありたい姿と、その実現に向けて解決すべき環境・社会課題について徹底的に議論しました。そして世界が「持続的に発展する自律分散型の社会」に向かうとの認識のもと、「持続可能な社会の実現」と「人間中心の生きがい追求」に貢献していくことを当社の存在意義と再定義しました。
これは2003年の統合以来、当社が経営戦略の根幹に据えてきた姿勢でもあり、私自身も社長就任以来、「持続可能な社会、誰もが生きがいを持って暮らせる社会の実現に貢献することこそが、企業の持続的成長を可能にする」との信念のもと経営に取り組んできました。こうした考えは社員にも浸透しており、若手を中心としたメンバーが自ら提案してスタートした社会課題解決プロジェクトが稼働するなど、自発的な取り組みが活発化しています。世の中を本気で良くしたいという信念を持つ人財がいることを、大変心強く感じています。
そして2020年度には、当社が事業活動を通じて社会の課題解決に貢献するテーマを、「働きがい向上及び企業活性化」「健康で高い生活の質の実現」「社会における安全/安心確保」「気候変動への対応」「有限な資源の有効利用」の5つのマテリアリティとして明確化しました。とりわけ、グローバルな課題である「気候変動」に対しては、2009年に長期環境ビジョン「エコビジョン2050」を策定して以来、長期的な目標を掲げて取り組んできました。そして2020年度には、「カーボンマイナス」の目標達成期限を大幅に前倒し、2030年に「カーボンマイナス」を実現するという意欲的な目標を定めました。当社の環境経営のノウハウや技術をお客様企業やお取引先といったパートナーと共有し、バリューチェーン全体の環境負荷低減を図り、当社のCO2排出量に比べお客様企業やお取引先でのCO2削減貢献量を大きくすることを目指します。今後は、環境以外のマテリアリティについても、当社の取り組みが及ぼす社会的・経済的なインパクトを定量化し、具体的なKPIを設定することで活動を加速させていきます。
当社は、経営理念「新しい価値の創造」のもと、これからもあらゆる事業活動を通じて環境・社会価値と経済価値を創出していきます。そして、真の社会課題解決企業として持続可能な社会の実現に貢献すると同時に、中長期的な企業価値の向上を実現してまいります。ステークホルダーの皆様には今後も変わらぬご支援を賜りますようお願い申しあげます。

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価値創造ストーリー (PDF:2.5MB)

  • コニカミノルタフィロソフィー
  • コニカミノルタのDNA
  • 価値創造プロセス
  • 価値創造に向けたマテリアリティ

中長期の価値創造戦略 (PDF:3.9MB)

  • 中期経営計画の変遷
  • CEOメッセージ
  • 中期経営計画「DX2022」
  • CFOメッセージ
  • 中長期の成長ドライバー
  • 環境戦略

価値創造を支える基盤 (PDF:2.4MB)

  • コーポレートガバナンスの概要
  • 取締役会議長メッセージ
  • 指名・監査・報酬委員長メッセージ
  • コーポレートガバナンス
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  • 外部評価

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