いいフォームで走ることは、怪我の防止やタイム向上に非常に重要なポイントです。
今回は、Vol.1にて明らかとなった課題を宇賀地コーチに徹底解説していきます。

今回のナビゲーター:宇賀地強コーチ

2013年モスクワ世界陸上10000m日本代表。現在はコーチとして、選手の指導にあたっている。

モニター:松本彩花さん

コロナ禍での運動不足解消のため、ランニングを始めたいと考えているビギナーランナー。
「走り始めるにあたって正しいフォームのポイントが知りたいです」

モニター:伏木蒼太郎さん

中学から陸上部。市民ランナーとしてフルマラソンを2時間20分台で走る上級ランナー。
「フォームの改善点を知って故障リスクを抑えたいです」

フォーム改善の最大の意義は故障予防にある

宇賀地コーチにとってランニングフォームの重要性はどのように考えていますか。

宇賀地

何よりも大きな理由は故障を防ぐことだと思います。バランスが悪かったり、歪みがあると体にかかる負荷に偏りが出てしまい、故障につながってしまいます。故障せず練習を継続することで速く走れるようになるし、速く走れるようになればさらにいいフォームも身についていきます。

いいフォームは走力向上のいい循環を生む鍵。その重要性は市民ランナーもトップ選手も同じです。陸上競技部のメンバーはフォームづくりのために日頃どんなことを行っているのでしょうか。

宇賀地

フォームというのは、走りながら改善するのがかなり難しいんです。我々は走る前の準備を大切にしています。走る時に使うべきお尻や体幹に刺激を入れ、その筋肉を使いやすくしてから走り出すんです。その準備に2時間ぐらいかける選手もいるんですよ。

走る前に2時間とは驚きですが、それほどまでにいいフォーム作りは大事だとも言えます。

上半身のねじれの大きさを活かすには?

これからランニングを始めたいと考えている松本さん。まずはRunalytic®で解析した動画を宇賀地コーチに見ていただき、その評価をうかがいました。

宇賀地

目線が下に下がってしまっていますね。接地の感じも転ばないようにそーっと置きにいってる感じです。一方で、接地時間が非常に短いところは素晴らしいと思いました。

日頃から選手の走りを見ている宇賀地コーチ、数秒間の動画を見ただけで、これだけのことがわかってしまうのはさすがです。続いて骨格線の入った動画で大山選手と比較してみます。

宇賀地

大山選手と比べると上半身のねじりが大きいのが顕著ですね。これは悪いことではないです。女子のトップ選手でも腕を横方向に振って推進力を得て走る選手は結構います。逆にこれを強みとして活かすためには、腕を振る時に肩甲骨から動かすことです。肩甲骨が使えると股関節と連動してそれだけストライドも伸びてきます。

松本

解析結果では、「腰の高さ」と「遊脚の流れ」に赤字が出ているんですけど、これを改善するにはどうしたらいいのでしょうか。

宇賀地

なるほど。これを安易に改善しようとすると、着地の足などに意識がいってしまいます。そうすると、体の末端部分ばかり気にしすぎて、膝やふくらはぎに負荷がかかりすぎてしまうんです。足元から意識する位置を上げて、お尻とお腹周りで地面からの衝撃を受けとめるような意識を持ってみてください。

松本

へえー、脚ではなくお尻とお腹なんですね。

宇賀地

はい。お尻とお腹を意識するだけでも、着地の足やふくらはぎなど末端にかかる負荷は変わってくると思います。特にお尻やももの後ろの筋肉は持久力に長けていると言われていて、そこをうまく使えるようになると長い距離での後半の失速などを防ぐ走りができるようになるはずです。

しっかり着地してその反動で進むには?

続いてマラソンを2時間20分台で走る伏木さんのフォーム検証。Runalytic®の動画と解析結果を見て、宇賀地コーチは伏木さんの着地の問題点をズバリ指摘してしまいます。

宇賀地

伏木さん、あえてフォアフットで着地しようと意識して走ってますか?

伏木

はい。以前フォアフット着地が注目されたことがあって、それ以来ずっと意識して走っています。

フォアフット着地とは、足の前の部分から着地をする、スピードランナーに多い走り方。地面の反発を得て走れる一方で、骨格や可動域などの個人差によって合う人と合わない人が出てきます。伏木さんの場合も、この走法に起因する気になる点がいくつかあるようです。

伏木

実は・・・アキレス腱やシンスプリントの怪我が多いんです。Runalytic®での解析結果では、着地が体より前になってしまっていることがわかりました。

宇賀地

なるほど。前で着地してしまうのは、フォアフットを意識しすぎているから。これだとふくらはぎなどに張りが出やすいし、アキレス腱にも負荷がかかりますよね。ストライドを伸ばそうとしてそういう走りになるんだと思います。ストライドって、歩幅を伸ばすことではなく、1歩でどれだけ前に進むか。無理矢理、足を前に出す必要はないんです。それよりも、体の真下に足をつくイメージで走ってみてください。

伏木

体の真下で着地しようとしても、一度ついた癖がなかなか抜けなくて・・・何かいい方法はありますか?

宇賀地

コニカミノルタが取り入れているのは下り坂を使ったトレーニングです。下り坂を走るのってスピードが出過ぎて足だけが勝手に前にいってしまうので、結構難しいんです。

伏木

下り坂ですか?!そんなトレーニング方法があるんですね。

宇賀地

下らされるのではなく、自分のコントロールで下る。しっかり接地してその反動で進むようなイメージで走ってみてください。ただしかなり負荷がかかりますので、このトレーニングは月に1回か2回程度にしておいてください。

伏木

自分では思いつきませんでした…。早速練習に取り入れてみます!

参考にしたいトレーニング動画はこちら

見える化することでわかること

コニカミノルタ独自のFORXAI(画像を中心としたAI)技術によって驚くほど顕著に見えてきたランニングフォームの課題とその対策。あらためて、画像解析を使って客観視することのメリットとは何でしょう。

宇賀地

走っていて感覚的にどこか変だと感じていたことを、このように可視化してもらえると非常にわかりやすいですよね。私たち競技者には特に有用で、動画を時系列で比べて、それまで取り組んできたフィジカルトレーングや、坂道トレーニングが正しかったかどうかを評価できる。走りの良し悪しについて、タイム以外の評価軸を持つことができるのが大きなメリットだと思います。

伏木

これからさらにタイムを追求していくためにも、故障の要因にもなっていたフォームの問題点とやるべきことが明確になったので、とても有意義でした。

松本

ただ走るのではなく、意識するポイントがわかってよかったです。楽しみつつ、できればタイムも目指して走ってみたいなと思いました。

宇賀地

データだけがすべてではありませんし、それにとらわれすぎる必要もありませんが、客観的な視点から気づきを得てもらえたのは嬉しいですね。これからも楽しく、怪我なく走り続けてください。

今回ランニングフォームを明らかにしたのは、コニカミノルタ独自のFORXAI(画像を中心としたIoT/AI技術)を応用し、開発したRunalytic®です。
線で単純化することによって体の傾きや膝、股関節の角度などをよりわかりやすく示します。首、耳、目、肩、ひじ、膝、腰など、18箇所の部位をリアルタイムで骨格として表示し、その位置関係から、フォームを評価しています。

コニカミノルタが培った画像AIの技術を使うことで人の姿勢を正しく表すことが出来ます。
このRualytic®の開発には陸上競技部の大山選手も関わっており、姿勢の良し悪しを判断する重要な部分に経験が生かされています。