描き、思考し、言葉にして
クリエイティブ力を育む

INTRODUCTION
要領の良さはデザインの敵?
いかに「造形」と向き合うか
最近「デザイン」という言葉が使われる範囲が広がり、体験デザイン、チームデザインなどさまざまな「〇〇デザイン」という言葉を耳にすることが増えました。では私たちは一体なにをデザインする人でしょうか。どんな課題もそつなくこなし、計画通りにプロジェクトを推進できて、試行錯誤による時間ロスを回避してスマートに仕事をこなせるデザイナー?
ときに私たちは自問します。それは楽しいのか。デザイナーになった意味があるのか。そのスマートさは試行錯誤で答えを探る苦しさから逃げた「スマートさ」ではないのか。デザイナーに求められる仕事は多様だが、「美しいものを求める」というプロダクトデザイナーとしての本懐が、そのスマートな仕事に埋もれてどこかに行ってしまってないか?
また、求められるデザインの範囲が広がることで、手書きスケッチやモックアップ作成など造形に集中して現物を手作りする機会が減少しています。「モノづくり」だけではなくなった現在のビジネス環境においては、何度も現物を作って確かめるやり方はスマートではないと思われるでしょう。しかし効率化を追求するあまりアイデアの幅を狭めてしまっては、より良い結果を生むことはできません。
私たちデザインセンターでは、デザイナーに求められる業務が多様化する中で大切なものを失ったのではないかという危機感を抱き、「かつてのような鍛錬の場がないなら、自ら作ろう。」と、さまざまな取り組みを実践しています。


ACTION - 01
プロダクトデザインの手引きで
デザイナーの「思考力」を養う
どんな鍛錬の場を設け、そこでなにが行われているのか。その前に、私たちデザイナーが共有している「プロダクト開発プロセス レファレンス」についてご紹介します。
ユーザー視点で製品やサービスを考える「デザイン思考」は、もはやデザイナーに限らず、 一部のビジネスパーソンを中心に一般にも浸透するようになりました。しかし、デザイン思考を説明する多くのコンテンツでは、実際のプロダクトにどう生かされたのかが説明されていません。
私たちのレファレンスブックは実際に手がけたプロダクトを軸に、完成に至るまでのデザイナーの思考プロセスに沿って、配慮すべきポイントを整理したものです。デザインの過程ごとに「虫の目と鳥の目を行き来しよう」「速く作って早く気付こう」「自分のかわいいアイデアにムチを打とう」といったタイトルを立てて、各プロセスでの注意事項やアイデアを出すためのヒントを、イラストと解説で分かりやすくまとめています。

デザイナーにとっての当たり前を整理した資料ですが、その当たり前は人によって曖昧なため、取り組みレベルにバラつきがありました。このレファレンスは、プロダクトデザインのノウハウを可視化・言語化することで、技能承継における教材としての価値もあります。実際の業務に行き詰った際のヒントを得るだけでなく、自らのデザインの妥当性を確かめるためのチェックリストとしても活用され、さまざまなデザイン業務におけるクオリティの向上に役立っています。
ACTION - 02
世にあるデザインを解剖し
「らしさ」を言語で捉える
世の中には素晴らしいデザインが多数あり、それを生み出した有名デザイナーも数多く存在しています。では、そのデザインのどこが素晴らしいのか、有名デザイナーたらしめている「らしさ」はなにか。この点を掘り下げて考えたことはあるでしょうか。
私たちはこれを「デザインの解剖」と名づけ、例えば一流ブランドや有名デザイナーのプロダクトなどを題材として、そのブランドらしさやデザイナーらしさはどこにあるのか考察し、発表する機会を定期的に設けています。これは「スッキリしている」「高そうに見える」といった自分が感じた印象を言語化し、議論を通じてその解釈をさらに掘り下げる鍛錬の場になっています。
実際にやってみると、ブランドやデザインの価値と捉えている部分は人によって異なることが分かります。その違いを認識して多角的な視点を鍛えることでデザインに対する解像度が高まり、各デザイナーの世界観を言葉で捉えられる力がつきます。
デザインを見る力、言語で表現する力を養うことで、デザイン業務において説得力のある説明が可能になり、アウトプットに対するより深い議論からさらに良いデザインを生むきっかけになると考えています。

ACTION - 03
手を動かし、造形力を磨く
スケッチ会とは
最も現場感を持って私たちが取り組んでいるのが、1日7時間、3日間連続で参加者を一堂に集めて行う「スケッチ会」です。この取り組みでは、当社製品など実際のプロダクトを題材に別案のスケッチを描き、最終日にプレゼンテーションを行います。
また、ラフスケッチには最低10案以上という下限を設けるなど、いまどきの流行語「タイパ」「コスパ」とは真逆のアプローチで行います。会の終了後には、立場に関係なく対等なデザイナー同士として、お互いのアウトプットに対する率直な意見をぶつけ合う会も実施しています。
目の前の仕事で多忙なデザイナーたちが、合間を縫ってこれだけスケッチと向き合う機会を作ることは簡単ではありません。それでも多くのデザイナーが参加することから、各自のモチベーションの高さが分かると思います。
参加者からは「自分以外のデザイナーのデザインプロセスを知る貴重な機会」「現場でのデザインプロセスが凝縮されているため日々の業務に生かせる」「実業務の稽古場になっている」のような意見があり、自らのスキル向上に役立てたいという強い意欲が感じられます。


OUR DESIGN
地道に、そして泥臭く
お互いを鍛える
代表的な取り組みをいくつか紹介しましたが、こうした活動はデザイナーから自発的に生み出されたものです。かつては、ものごとを見る解像度を上げ世界観を作りこむ力、ストーリーテリング力、造形力の向上を目的とした「アドバンスデザイン」活動を行い、メンバーでSFストーリーを考え、漫画「太陽のグランフェッテ」として発表したこともあります。
現在のビジネス環境におけるデザイン業務が変化する中でも、失ってはならないこと、変えてはいけないことがあります。こうした危機意識をデザイナーが共有しているからこそ、さまざまな取り組みが継続され、組織的・体系的にスキルやマインドセットを養う体制が整いました。
今後もアイデアを造形・思考・言語化する手法をアップデートすることで、さまざまなプロジェクトにおける発想力を向上し、協働する人たちへの安心感も与えられるデザイナーになれるように、お互いを鍛え合う取り組みを目指しています。


冒頭で紹介したように、デザインが対象とする範囲が広がったことでデザイナーの業務の幅も大きく広がりました。目の前にはさまざまな課題があり、解決するためのツールも多様化しているため、効率性が重視されることも理解できます。
一方で「カタチとしてどうあるべきか」により良い答えを導くデザイナーとして、自らに課した泥臭いやり方にこだわり、飽くことなくスキルを磨き続けることに価値を見出している人たちがいます。私たちのプロダクトは、まさにそんなデザイナーたちによって生み出されています。
OUR ACTIVITIES

デザイナーのクリエイティブ力向上のための企画を実施しています。企画担当者も自ら同じ場に飛び込み手を動かすことで、指導・評価ではなく対等なデザイナー同士としてリアルな試行錯誤を共体験しながら伴走します。
STORIES
デザインセンターの活動紹介
-
NEW
STORIES #03
プロジェクトを加速させる
デザインシステム「BLUE」私たちが取り組んでいるコニカミノルタのオフィス事業向けデザインシステム「BLUE」は、 “Brand Language & User Experience” の略称で、ブランドとユーザー体験(UX)の一貫性向上や、開発の効率化を目的としています。
-
NEW
STORIES #02
グローバルに浸透させる
コニカミノルタデザイン思考コニカミノルタは、経営理念である「新しい価値の創造」に取り組んでいます。これは人間社会の進化を…
-
NEW
STORIES #01
描き、思考し、言葉にして
クリエイティブ力を育む最近「デザイン」と言う言葉が使われる範囲が広がり、体験デザイン、チームデザインなどさまざまな「〇〇デザイン」という言葉を耳にすることも増えました。では私たちは何をデザインする人でしょう。