イノベーションストーリーズ

環境経営

環境貢献と事業成長は両立できる
独自の進化を続けてきた環境活動の歴史

目次

環境対策はお金がかかる。それはかつて、多くの企業にとって常識でした。当社は「環境活動で企業価値に貢献すること」を追求し、他社に先がけて次々と先進的な目標を打ち出し、達成してきました。それはやがて、自社の責任範囲を超え、お取引先やお客様などのステークホルダーと連携することで、環境活動を通じて新たな価値を生み出し社会を変えていこう、という考え方につながっていくのです。

歴史を振り返ると、当社は早くから環境活動に取り組んできました。写真用フイルムなどを製造する化学メーカーだったコニカは、公害問題に敏感に対応し、1971年に各事業所に、翌年には本社組織として環境部署を設置。また、厳格な認定基準で知られるドイツの環境ラベル「ブルーエンジェルマーク」で、1992年、コニカおよびミノルタの製品が複写機分野で初の認定を受けています。初期の環境施策の目的は、法規制の遵守や基準への適合でしたが、守るだけでは物足りない、と思った人たちが新たな挑戦を始めたことから、当社独自のアプローチが始まります。

発想の転換で廃棄物削減と
コスト削減を両立

当社の環境活動が大きく舵を切ったのは、1999年のゼロエミッション活動開始でした。ゼロエミッションとは、生産活動から出てくる排出物を再資源化して埋め立て量を究極まで減らすとともに、排出物自体の削減も目指す活動です。当時、ゼロエミッションに取り組む企業は多くありましたが、排出物を種類ごとに分別してリサイクル業者を探すアプローチが主流。手間も処理費用もかかるため、大きな負担となっていました。

ところが、環境部門に来て間もない担当者が発想を転換、その処理費用に着目したのです。「生産部門はコストに敏感。排出物削減がコスト削減にもつながるなら、きっと協力してもらえる。」そして打ち出した目標は、処理費用の9割削減でした。とても無理な要求にも思えましたが、環境部門の担当者には作戦がありました。排出物を社内で活用できれば排出物は減るし、新規に購入する量も減る。その効果を考えれば不可能ではない――。

まず、ターゲットに置いたのは、カメラ部品の生産拠点である山梨コニカの成型部品の「ランナー」でした。ランナーとは、プラモデルでいえばパーツの周りを囲む枠の部分です。部品の成型時に溶けたプラスチックが通る道でもあるため、なくすことは難しい。ただ、調べてみると、なんと購入した原材料の半分がランナーとして排出されていたのです。これをなんとかリサイクルできないか?

ランナー

ここで課題となったのは、品質の維持との兼ね合いです。このプラスチックには成型精度を高めるためにガラス繊維が入っており、リサイクルのために砕いたり溶かしたりすると、部品の強度や精度が落ち、製品不具合の原因になる、というのが定説でした。しかし、ここであきらめるわけにはいきません。破砕したランナーを混ぜても必要な強度や精度が確保できる割合を求め、終業後の工場で実際の生産設備を使って、実験を繰り返しました。その結果、20%ならばランナーをバージン材(新品の原料)に混ぜても問題ないことを確認、2001年6月、ついにリサイクル技術の実用化に成功したのです。

この成果には、原材料メーカーの技術者の協力も欠かせないものでした。彼らにとっては、リサイクルによってバージン材の売上が減ってしまいます。しかし、このノウハウを他の顧客と共有してよいと取り決めたことで、他メーカーとの差別化にも繋がる、とご理解いただけたのです。

山梨コニカはグループで最初のゼロエミッション達成工場となり、マスコミにも大きく取り上げられました。この成功事例に触発されて、他の生産拠点からもゼロエミッション活動に取り組みたいとの声が上がるようになりました。生産品目も排出物の状況も異なる各工場では、施策も異なります。納品される部品が過剰包装になっていないかをサプライヤーと検討して無駄を取る、清掃手順を見直しトナーのロスの削減を進めるなど、さまざまな創意工夫によって、2001年度中に5つの拠点がゼロエミッションを達成しました。

コニカとミノルタの経営統合後の2005年には海外の生産拠点にも活動を拡大しました。環境担当者が現地に赴いて伴走する姿勢を続けて、2009年、ついに全世界の生産拠点でゼロエミッション・レベル2を達成。達成時には必ず、本社の環境担当役員が現地に出向いて認定授与を行い、共に成果を喜び合いました。この活動は2010年から、CO2排出抑制や化学物質リスク低減も含めた「グリーンファクトリー認定制度」として、コニカミノルタの環境活動を牽引していくことになります。達成目標は3年ごとの中期経営計画のタイミングで見直され、現在でもレベルアップが続いています。ゼロエミッション活動開始から四半世紀経った今、環境への取り組みをコストダウンとペアで考えることは、当たり前の活動として世界各地にしっかりと根付いています。

長期的な視点が着実な成果を生み出す

もうひとつの先進的な取り組みが、2009年1月に発表した「エコビジョン2050」です。これは2050年をターゲットとする長期環境ビジョンで、「地球温暖化防止」「循環型社会への対応」「生物多様性の修復と保全」の3つを掲げていました。なかでも、温室効果ガスの削減を最重要テーマと位置づけ、「製品ライフサイクルにおけるCO2排出量を2050年までに2005年度比で80%削減」を目標としました。当時、そんな遠大で挑戦的な目標を語る企業はほとんどなく、しかも、2008年9月に起きたリーマン・ブラザーズの破綻による世界的な金融不安が広がっていた時期です。社内でも、なぜそんなビジョンを掲げる必要があるのか?という疑問の声が上がりました。しかし、環境担当者には確信がありました。「可能な数字を積み上げていくだけでは、大きな目標は実現できない。先を見据えた目標を定めて、バックキャストで取り組むべきだ。」

CO2排出量グラフ

目標には、納得できる根拠を示し価値観を共有することが重要です。そこで着目したのは「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が示した、地球が許容できる温室効果ガスの自然吸収量でした。それは2050年では114億tとされており、その量を国連が予想する世界人口92億人で割ると、1.24t。これが、2050年に人間一人に許される排出量ということになります。かたや、2004年に世界で排出された温室効果ガス490億tを人口64億人で割ると7.66t。つまり、80%の削減が必要、との結論が導き出されるのです。

地球が許容できる温室効果 ガスの自然吸収量

エコビジョン2050はコニカミノルタの環境活動の指針となり、毎年計画を立て実行していくことで、着実に成果を上げてきました。2022年度にはすでに58%削減を達成。翌年、2050年目標を80%から100%削減(ネットゼロ)に改訂し、さらなる挑戦を続けています。

会社の枠を超えて環境価値を創出

当社の環境活動のポイントは、自社内の活動にとどまらず、ステークホルダーと連携して社会課題の解決を目指すことにあります。その先駆けとなったのは、2014年にスタートした「グリーンサプライヤー活動」でした。各国の生産拠点に部品を納入いただいているサプライヤーに出向いて、省エネのための診断を行い、改善のノウハウを提供するのです。当初は彼らも消極的でしたが、当社で環境負荷低減とコスト削減を同時に実現してきた実績を見せることで、やってみようか、と受け入れられ始めました。以前から、生産・調達部門がサプライヤー支援として品質向上のためのサポートを行っていたこともあり、改善活動を協力して行う下地ができていたことも助けになりました。

当初は、環境担当者が直接サプライヤーを訪問して省エネ診断を行っていました。現地の状況を実際に確認することで得られるものも大きかったのですが、それでは対応できる数に限界があります。そこで、省エネ診断を自動で行えるデジタルツールを開発することで、サプライヤー自らが診断を実施し、課題を発見して施策を実行できるようにしました。年間3,4社だった対応数が10社ほどになり、活動は一気に広がりました。2022年までに約50社で実施、今後はさらに加速が見込まれています。

2016年には、エコビジョン2050の新たなコミットメントとして「カーボンマイナス」を設定しました。当社では、カーボンマイナスとは「自社の責任範囲外のCO2削減貢献量が、排出量を上回る状態を生み出すこと」と定義しています。すなわち自社の製品ライフサイクル(材料調達、生産、物流、販売・サービス、お客様の製品使用、廃棄)に伴うCO2を削減するだけでなく、お取引先やお客様などのステークホルダーに働きかけることで、事業活動による排出量を上回る削減効果を⽣み出し、社会全体のCO2を減らしていくのです。

その取り組みのひとつがグリーンマーケティング活動です。いまや環境対応はどの企業・団体にとっても重要ですが、有効な手段を見出せずにいるところもあるはず。そこで、環境セミナーで当社の活動と実績を広く共有する、環境担当者と営業担当者がタッグを組んで、自社の環境技術・ノウハウをお客様の課題解決に役立てていただき顧客との関係を強くする、といった活動を進めています。また、事業自体を通じて、お客様先での環境課題の解決に貢献することを志向しています。プロダクションプリント事業において、アナログ印刷からデジタル印刷へのシフトを推進することで、工程における排出物や使用エネルギーを減らす、センシング事業において、人間の目には見えない波長を捉えて素材の成分や特性などの判別を可能とするハイパースペクトルイメージング技術を、リサイクル業界での廃プラスチックの自動選別に応用する、などがその一例です。

RGB画像 解析画像

さらに、2020年に業種の壁を超えた共創の場として、「環境デジタルプラットフォーム」を国内16社で立ち上げました。参加企業各社の環境ナレッジ共有やワークショップでの意見交換を行うことで、産業界全体の環境経営を進化させていく取り組みです。2023年には86社に参加いただくまでになり、ますます多くの企業のリソースの融合が期待されます。

環境デジタルプラットフォーム

社会が急速に脱炭素、地球資源使用ゼロに向かう時代、コニカミノルタは、環境活動を事業成長と両立させる視点を大切にしながら、当社だけでは成し得ない環境への貢献を創出することで、よりよい社会の実現を目指していきます。

2003年に経営統合する以前の2社はそれぞれ社名変更を重ねてきたため、経営統合直前の両社のブランドであるコニカ、ミノルタという呼称で統一しました。

環境経営の年表

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