イノベーションストーリーズ

光学コンポーネント

性能へのこだわりがNo.1を生み出す
支えるのは受け継がれてきた光学技術

目次

カメラにルーツを持つコニカとミノルタは、ともに独自の光学技術を培ってきました。1930年代にはレンズ製作を開始、1970年代には両社とも、カメラ部門からレンズ部門が独立しています。2003年の経営統合時には、コニカはプラスチックレンズに、ミノルタはガラスレンズに強みを持つ補完関係にありました。当社は2006年にカメラ事業を終了しましたが、その光に対するDNAはその後も、さまざまな形で受け継がれています。

光学設計と精密加工の技術を磨き上げていく中で、当社は圧倒的なシェアを誇る製品を生み出してきました。そのひとつが、超精密金型加工技術による高品質な非球面プラスチックレンズであり、もうひとつが究極の精度を実現するガラス研磨技術に裏打ちされたプロジェクター用投影レンズでした。

世界初の技術がCDプレーヤー普及に貢献

ピックアップレンズとは、CDやDVD、ブルーレイディスク(BD)などの光ディスクのデータを再生・記録するドライブのキーパーツのひとつです。ドライブに内蔵された光源から出るレーザー光をディスク上にフォーカスすることで、音楽や映像など情報を正確に読み取ることができます。極めて高い精度が要求されるうえに、メディアの進化とともに必要な仕様がどんどん変化するこの分野において、当社はずっとトップシェアを維持してきました。

発端は1980年、日本の大手電機メーカーから、CD用のピックアップレンズをプラスチックで作れないか、と打診を受けたことでした。プラスチックはガラスより低価格で成形がしやすく、大量生産が可能という利点がありますが、柔らかく熱に弱い、静電気によりゴミが付着する、などの課題もありました。プラスチックレンズの性能に懐疑的な見方もある中、コニカは同社と共同開発契約を締結。当初は球面ガラスを組み合わせたレンズの開発を行っていましたが、1982年、非球面プラスチックレンズの開発に着手します。

実は、コニカには非球面プラスチックレンズ製造の実績がありました。1975年に発売した世界初のフラッシュ内蔵コンパクトカメラ「C35EF(ピッカリコニカ)」の撮影レンズに採用していたのです。このカメラは40万台以上売れたにもかかわらず、プラスチックレンズに関するクレームは1件も出さなかったほど、高品質のレンズを作り上げていたのでした。

しかし、ピックアップレンズ開発の難易度の高さは並大抵のものではありませんでした。直径7ミリほどのレンズに、わずか0.2ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)より小さな誤差しか許されません。この精度を実現するため、NASAの航空機部品加工技術を応用した加工機を導入して、金型を作成、成形・評価の試行錯誤を繰り返しました。そしてついに、わずか一枚のプラスチックレンズで、これまでガラスレンズ数枚を要していた性能を実現。1984年、世界初のCD用非球面プラスチックレンズの開発成功と、量産開始の対外発表を行いました。同年、共同開発パートナーから、このレンズを組み込んだリーズナブルなポータブルCDプレーヤーが発売されました。他社もそれに続き、CDプレーヤーは急速に普及していきます。

お客様の声の真意を共有し、すぐ動けるのが強み

CD用に始まったピックアップレンズ開発は、メディアの多様化に対応してステップアップしていきました。1996年には、CDやDVDなど、厚みなどが異なる光ディスクを1つの光学系で読み取り、再生できる、マルチディスク対応ピックアップ光学系の開発に世界で初めて成功。2002年にはBD用ピックアップレンズの量産化も始まりました。この年、光ディスク用ピックアップレンズの累計生産販売量が20億個を突破、世界市場シェアも50%に到達し、業界トップの地位は確固たるものとなっていきます。

次のテーマは、BD、DVD、CDの3つに1枚で対応できるレンズの開発でした。あるお客様から「来年発売予定の新製品でぜひ使いたい」とのご要望をいただいたのです。それを実現したのは、2003年に統合を果たしていたコニカとミノルタのシナジーでした。コニカで培ってきたプラスチックの技術に、ミノルタが強みを持つガラスの技術を組み合わせて、ハイブリッドの光学系を作り上げました。2006年、このレンズを組み込んだプレーヤーは予定通りに発売を開始。トップメーカーと見込んでくださったお客様の期待に応えられた瞬間でした。さらに2010年には、BD、DVD、CDの3波長に単体のプラスチックレンズで対応する技術を開発、提供を開始し、さらにシェアを拡大しました。

世界初の技術を次々に開発してきたピックアップレンズ事業ですが、「当社の強みは、実はデリバリーの対応力でもあるのです。」と営業担当者は語ります。「高度な生産技術も重要ですが、急な依頼にもすぐに対応できるのは、コンパクトな組織で生産・開発・販売が一体となっているからこそ。お客様の生の声をすぐに伝えて、すぐに動けることの意味は大きかったと思います。」

CDの黎明期から光ディスク業界とともに歩んできたピックアップレンズチームは、現在も必要とされる需要を一手に担う形で、光デバイス産業を支え続けています。

真摯な協力が実を結んだシネマ用レンズ

かつて映画と言えば、映写機でフィルムを投影する方式でしたが、現在は多くの映画館がデジタルシネマ、すなわちプロジェクターでデジタルデータを投影する方式になっています。このプロジェクターに使われているのが、シネマ投影レンズ――当社が高いシェアを持っている製品の一つです。大画面に鮮明な画像を映し出すために、精緻なガラス研磨によるレンズ加工技術を駆使して生み出された、高い信頼性を併せ持った高性能レンズなのです。

ミノルタがプロジェクター用レンズの市場に参入したのは、1995年頃のことでした。当初は、液晶プロジェクターとDLP(Digital Light Processing)プロジェクターの両方を手掛けていましたが、数年後にはDLP方式に特化するようになりました。DLP方式とは、DMD(Digital Micromirror Device)チップ上に敷き詰められた極小の鏡の傾きを変えて光をコントロールし、画面に投影する方式です。当社の学会発表を契機に、このDMDを開発した米国の大手半導体メーカーと関係が始まり、その後の事業の展開を決定づけることとなりました。

2000年はデジタルプロジェクター市場が揺籃期を脱した年でした。特にビジネスマンのプレゼンや教育用途の需要が伸びる中で、価格競争も激化している状況でした。売れ筋だったのは、比較的安価な液晶方式と、DMDチップを1つ使用する方式の製品でした。しかし、当社はそちらの領域ではなく、DMDチップを3つ使用するレンズユニットを開発していました。これは大型で高価なため、販売数が限られますが、反面、技術に裏打ちされた高品質が競争軸となり長期的な優位性を認識していました。そこで、粘り強く3チップ方式の開発を続けたのです。

転機となったのは、高輝度プロジェクターの登場でした。光源の変化や技術の進歩によって、画像をより明るく映せるようになったことで、大きな画面への投影が可能になったのです。そこで、イベント会場やコンサートなどでの利用に加えて、映画館でデジタルシネマを上映する機材として注目され始めました。その用途に適していたのが、DLPの3チップ方式のレンズユニットです。高輝度・高画質の厳しい品質基準をクリアして、シネマ用の投影レンズとして当社製品が採用され、ほぼ100%のシェアを占めるまでになりました。1995年以来、彼らと共に思い描くことを実現すべく、惜しみなく力を注いできたことが、ついに実を結んだのです。

2007年頃から登場したデジタルシネマ向け新製品群は、2011年までに、先進国の映画館7,8割の規模の数量が出荷され、市場に導入されました。その後、新興国でも経済発展に伴ってシネマコンプレックスが急増し、需要が高まってきています。また、イベントや観光地などで人気の高いプロジェクションマッピングの投影にも当社のレンズユニットが使われるなど、その活用領域も拡大しています。

究極の技術が支える新たな挑戦

シネマ投影レンズを始めとする大型プロジェクター用レンズの高輝度・高画質を作り出しているのは、究極のガラス研磨によるレンズ加工技術です。それはかつて一眼レフ用のレンズを製造していた頃から、脈々と受け継がれてきました。当初から生産を担ってきた大阪狭山サイトに加え、1985年には高槻サイトに光学技術の開発設計部門が発足、両者は1994年に光システムセンターとして統合一体化し、切磋琢磨してきました。また、ガラス研磨でどうしても出てしまう誤差を調整する「組み立て調芯」も、高精度の製品を作り込むのに欠かせない、重要な技術でした。

このような技術に支えられて、超高精度研磨レンズを用いた半導体製造装置向け光学コンポーネントについても10年以上にわたって提供し、当社は大手製造装置メーカーと確かな信頼関係を築いています。光学コンポーネント事業は、デジタル化のさらなる進化を見据えて、半導体製造装置向けといった産業用途のフィールドに大きく舵を切り、新たな挑戦を開始しています。

※DLP、DMDはテキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。
2003年に経営統合する以前の2社はそれぞれ社名変更を重ねてきたため、経営統合直前の両社のブランドであるコニカ、ミノルタという呼称で統一しました。

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