イノベーションストーリーズ

オフィス事業

世界中のあらゆる働く現場で
活用されてきた複合機
経営統合を生んだ中核事業の歴史

目次

オフィスで仕事をするうえで、必要不可欠な複合機。コピーやプリント、FAX機能に加え、スキャン機能をインプットデバイスとしたドキュメント管理も可能です。いまや、世界各国の企業、団体、官公庁を問わず、どこにでも導入されており、当社製品のなかで最も多くの人の身近なところでお役に立っている製品かもしれません。

当社のオフィス事業の歴史を語るとき、2003年のコニカとミノルタの経営統合を外すことはできません。統合のきっかけとなったのは複写機・複合機であり、統合の過程で最も大きな試練を経験したのが、この事業だったからです。統合前の両社にとってオフィス事業は中核事業、しかも販売では完全に競合関係にありました。困難を乗り越えていった世界各国の社員たちの奮闘が、統合後の激動の時代の会社を支えていきました。

強みを真に活かすには統合しかない

統合より遡ること半世紀の1950年代後半、カメラ製造で培った光学・画像技術を活かせる分野として、コニカとミノルタはそれぞれ、複写機の開発に着手していました。初期の製品は感光紙に出力する方式でしたが、目標は普通紙に出力できる複写機でした。開発の壁となっていた特許をクリアして、コニカが1971年に発売したのが、「U-BIX(ユービックス)480」です。高画質かつコピーコストを抑えた普及機として、生産が需要に追い付かないほどの好評を博しました。

オフィスへのコンピューターの導入が進むなか、世界各国で複写機の需要も伸びていきます。当初、欧米市場には商社を通して輸出されていましたが、その後、主要国に両社の現地法人が設立され始め、海外販売は拡大していきました。

画期的な製品も誕生します。1983年にミノルタが発売した「EP450Z」は、倍率を自由に変えられるズーム機能を世界で初めて搭載し、世界的ヒット商品になりました。1990年には初のデジタルフルカラー複写機「CF70」を発売、その後のカラー複合機ビジネスの最初の一歩となりました。スタンドアロンだった複写機はネットワークにつながり始め、その後、スキャン機能やFAX機能も備えた複合機として進化していきます。

EP450Z

一方、コニカでは、1995年にデジタル複写機「Konica 7050」で、汎用機として世界最速の毎分50枚のコピー速度を実現、その後も高速機を上市していきます。また、フィルム製造で培った化学技術を活かし、従来の粉砕法トナーよりも形が均一で小粒径のため高画質が実現できる、「重合法トナー」の開発を進めました。トナーの優劣は複合機の品質に直結します。この重合法トナーが、両社の統合でも重要な要素となりました。

統合前、コニカとミノルタの複写機市場でのグローバルシェアは5~6位と、トップ3強からは水をあけられていました。競争力の向上を目指した両社は、2000年にオフィス機器分野での技術提携を開始します。幸い、それぞれの強みは補完関係にありました。コニカが高速、モノクロ、高耐久を得意とするのに対して、ミノルタは小型化、カラーに長けていたのです。強みを合わせて製品を相互共有すれば、開発や生産の効率が高まり、ラインナップの充実を図ることが可能です。さらに、トナーについては共同出資による生産会社「コニカミノルタサプライズ」を設立、重合法トナーの量産を開始しました。

しかし営業現場では、依然として両社は競合です。技術提携だけでは効果に限界があり、そこを突破するには経営統合が必要だと、両社の経営陣は判断しました。そして2003年1月7日、コニカとミノルタは経営統合を発表。8月に持株会社を設立、10月には両社の事業を再編し、6つの事業会社を立ち上げるという計画でした。そして、複写機等の製造・販売を行う部門は、事業会社、コニカミノルタビジネステクノロジーズ(以下、BT)としてスタートを切ることになったのです。

EP450Z

統合にあたり、全社で掲げられた方針のひとつが「ジャンルトップ戦略」――特定の市場、事業領域に経営資源を集中してその中でトップブランドの地位を確立する、という戦略です。BTは強みが発揮できる分野として軽印刷市場向けの高速機とともに、カラー複合機をターゲットに設定しました。当時、カラー複合機はデザイン事務所などの特定の業種にしか入っていませんでしたが、今後一般オフィスへ普及していくと見越していたのです。

※現在、オフィス機器領域はデジタルワークプレイス事業、軽印刷領域はプロフェッショナルプリント事業となっています。

販売部門の苦闘に報いたのは商品の力

2003年の年明け早々、経営統合の一報を聞いた各国の販売部門には衝撃が走りました。実は正式な発表より、新聞社によるスクープ報道が先だったのです。そして正式発表後すぐに、身を切るような大変な仕事が待ち受けていました。今まで競合としてしのぎを削ってきた両社の販売部門の再編です。一つの国、一つの都市に二つの販売会社は必要ありません。さらに、再編は自分たちだけの問題ではなかったのです。

CO2排出量グラフ

オフィス機器販売では、市場規模の大きな国には現地法人を置いて直販体制を持ちますが、多くの国では代理店を介した営業活動を行っていました。国によっては、コニカまたはミノルタの製品を独占的に販売する権利を認められた代理店などもあり、長年にわたって信頼関係を築いていました。その再編をどのように進めればよいのか。統合の目標は1+1を3の効果にすることでしたが、もしかすると1+1が1になってしまうかもしれない――。

特に多大な労力を要したのは、欧州統括部門でした。管轄しているのは、欧州に加えてアフリカ諸国、中東の一部も含む約60カ国です。状況の異なるそれぞれの国で粘り強く交渉を重ねながら、ひとつひとつ解決策を見出していかねばなりませんでした。こんなに大変な思いをして、統合で何かいいことがあるのか? そんな声が聞こえる中、一体感をもたらしたのは商品の力でした。

BTは2004年2月に新生KONICA MINOLTAを象徴する情報機器の新商品ブランドとして、「bizhub(ビズハブ)」を発表。businessを省略したbizと、hub(中心、中核)からなる造語で、「お客様をビジネスの中心に」という意味を込めています。そのブランドを冠した一号機「bizhub C350(毎分カラー22枚/白黒35枚)」は、新会社への期待もあり、バックオーダーが1年近くになるほどの売れ行きとなりました。

地球が許容できる温室効果 ガスの自然吸収量

待望の統合開発製品として登場したのが、2005年4月(日本では2月)発売の「bizhub C450 (毎分カラー35枚/白黒45枚) 」です。この機種の開発が本格的にスタートしたのは統合発表直後。画質と信頼性で世界一、なおかつ一般オフィスにも受け入れられる経済的な価格設定、という挑戦的な目標に向かって、開発は進められました。また、両社の技術を結集した統合制御システムの開発も、一時は開発者たちが会社の寮で半合宿状態になるほど困難を極めましたが、両社の開発文化の壁を乗り越えた真の統合製品となりました。こうして完成した製品は、高い評価を受け、特に、高速機が求められる米国で販売台数を伸ばしました。続いて2005年7月に発売した「bizhub C250(毎分カラー・白黒とも25枚)」は欧州で好調な販売が続きました。

2007年にはこれまでにない斬新なデザインの製品が登場しました。ブラック&ホワイトのスタイリッシュボディの「bizhub C550(毎分カラー45枚/白黒55枚)」です。オフィスの真ん中にも置けるというコンセプトで背面の美しさにも配慮。高生産性、高画質も相まって、シリーズ機とともに指名買いが出るほどの人気商品となりました。

困難を乗り越えていく中で、競争力のある製品が生まれたことが、事業全体の一体感につながっていきました。市場でのカラー化比率は大幅に増加、オフィス事業の増収増益は続き、2007年度には最高益を達成しました。

困難を乗り越えていく中で、競争力のある製品が生まれたことが、事業全体の一体感につながっていきました。市場でのカラー化比率は大幅に増加、オフィス事業の増収増益は続き、2007年度には最高益を達成しました。

その後、リーマンショックやコロナ禍など、さまざまな逆風にさらされながらも、ジャンルトップ戦略を継続し、2023年現在、欧州を中心とした約40カ国のA3カラー複合機において、1位または2位というシェアを獲得しています。また、需要の拡大が見込まれる新興国でも、カラー複合機の市場を牽引しています。現在もオフィス事業は、売り上げの5割強を占める重要な事業です。当社の屋台骨を支え、着実に利益を生み出すことで、新しい事業を育てていく役割をも担っているのです。

一番の財産はお客様とのつながり

複合機は、光学、メカトロニクス、画像処理、化学など、さまざまな技術のすり合わせの結晶です。しかし、統合当時の20年前とは異なり、技術的な差別化は難しいのが現状です。製品の機能で売上を主導する”プロダクトリーダーシップ”から、顧客との関係性を強化する”カスタマーインテマシー”へとシフトが進んでいます。

オフィス事業の一番の財産は、世界中の多様なお客様と、直接のつながりを持っていることです。複合機は、世界中のありとあらゆる企業や団体に入っており、お客様の数は他の事業とはけた違いです。複合機をお使いのところならどこへでも出向き、お客様と直接話ができるのです。そこから新たなビジネスチャンスが生まれます。例えば、ある医療機関では、複合機のサポートで見えてきた課題から、より幅広い業務のワークフローを改善するソリューション提供につながりました。また、2020年から3年近く続いたコロナ禍でリモートワークが進み働き方も変わってくる中で、オフィスレイアウトの企画デザインから施工までを行う、空間デザインの事業を立ち上げた例もありました。

複写機から始まったオフィス事業は、いまやデジタル複合機を中心に、ITサービスとの組み合わせにより、オフィス環境の課題解決や最適化に貢献するソリューションビジネスに変化を遂げています。当社は、世界中のお客様の課題に真摯に向き合い、信頼できるパートナーとして、新たな可能性を追求してまいります。

2003年に経営統合する以前の2社はそれぞれ社名変更を重ねてきたため、経営統合直前の両社のブランドであるコニカ、ミノルタという呼称で統一しました。

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