事業と連動した知的財産活動

特許で守る自動化の中核 ― インテリジェントメディアセンサー

印刷会社が抱える「品質のばらつき」「仕上がり再現性」「熟練者依存」といった課題に対し、当社は、インテリジェントメディアセンサー(IM‑104/IM‑105)により自動最適化環境を提供します。
IM‑104は、給紙装置から供給される用紙の特性を解析し、最適な印刷パラメータを自動設定します。また、IM‑105は、IQ‑601(濃度補正や色再現を自動最適化する画像品質調整ユニット)と連携することで、断裁誤差に起因する印刷位置のずれを抑制します。
これにより、誰でも安定した高品質出力を実現でき、セットアップ時間の短縮や不良削減など生産性向上に大きく寄与します。これらの価値を集約したデジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオ プレス)C14010シリーズ」は、印刷業務の効率化と収益改善を強力に後押しします。

AccurioPress C14010 7つのセンサー

顧客価値起点の知財戦略

知財戦略の立案・推進にあたり、知的財産部門と事業部門・開発部門とが連携し、部門横断のプロジェクト体制を構築しました。顧客課題、競合製品との差別化ポイント、製品ロードマップを踏まえ、当社として守るべき顧客価値を言語化してプロジェクトメンバー間で共有したうえで、価値実現に不可欠な技術を洗い出し、顧客価値と技術要素の対応関係を整理し、特許で保護すべき範囲を明確化して、権利化を計画的に推進しました。

特許権利化戦略の立案・遂行

特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」制度を活用して戦略的な特許権利化を推進しました。審査官を事業所に迎え、実際の製品によるデモンストレーションや事業戦略の説明を行い、インテリジェントメディアセンサー(IM)の社会的意義や特長を適切に理解いただいた上で審査を進行させました。その結果、キーとなる特許出願を広範な権利範囲で権利化することができました。さらに、スーパー早期審査や審査官との面接などの制度を戦略的に活用し、IM関連の重要特許出願の権利化を加速しました。

顧客価値起点で更なる特許障壁強化

また、部門横断のプロジェクトチームが連携し、取得した特許が実際に顧客価値を守れているかを多角的に検証しています。特許障壁に補強すべき点が見つかった場合は、周辺・関連領域で追加の特許出願を進めるなど、必要な対策を継続的に実施しています。こうした取り組みにより、特許障壁を厚く強固にして、事業の競争力を長期的に支えます。

世界各国で特許障壁を構築

日本・米国・欧州・中国で244件の特許群を短期間に戦略的に取得し、主要市場を広くカバーする強固な特許障壁を構築しています。IMの顧客価値を長期的に保護し、当社の競争優位と事業収益基盤の強化に貢献しています。

AccurioPress C14010 7つのセンサー

2020年度以降世界各国で登録されたIM関連特許の累計件数推移

VOICE

常務執行役 情報機器事業管掌 高山 典久

情報機器事業の強固な特許障壁を基盤に、印刷工程の自動化と品質革新を一段と進め、業界の常識を塗り替えていきます。独自の価値で競争優位を確かなものとし、市場を持続的にリードする存在として、未来の印刷産業を力強く前へと導いていきます。

インダストリー事業における知財活動の勝ち筋

インダストリー事業では、サプライチェーン上の顧客価値を先取りした製品・サービスに関するコア技術を、強固な特許網を戦略的に構築し保護することにより、高い収益を長期にわたり維持し、安定したキャッシュ創出を実現してきました。その代表例がピックアップレンズ事業およびVA‑TACフィルム事業です。

ピックアップレンズ事業

ピックアップレンズ事業では、1990年代に光メディアであるCD用の非球面プラスチック単レンズを世界に先駆けて製品化し、その基本特許を確保したことが参入障壁となり、その後の事業成長の起点となりました。CD用途に続いて、DVD/CD互換レンズ、BD用単波長・三波長互換レンズへと市場トレンドを先取りした製品開発を進めるのと並行して、各世代において基本特許と周辺特許の網を構築することで他社参入を抑制し、事業に貢献してきました。当社の顧客であるブランドオーナーおよびピックアップメーカーとの強い接点から技術課題を早期に予測・把握し、実装形態まで想定して戦略的に特許で囲い込むことにより、高収益構造を長期的に維持する一助となりました。

ピックアップレンズ

VA‑TACフィルム事業

VA‑TACフィルム事業では、写真フィルムから発展したTAC(トリアセテート)フィルムの製造に関する当社のコア技術である溶液製膜技術に、光学設計技術を融合し、特にVA型(垂直配向型)液晶の視野角拡大機能を担う位相差フィルムとして、大画面化・高輝度化を志向する液晶パネルメーカーや偏光板メーカーの要求仕様を満たす新しい顧客価値を創出してきました。
顧客価値を先取った技術開発と並走した戦略的な特許出願を継続的に行い、材料・製法・光学特性等の幅広い技術課題・観点で広範かつ強固な特許網を構築したことにより、競合の追随を許さない強固な知財ポジションを確立しました。特に海外生産国を見据えた外国出願の先行展開は、市場拡大フェーズでの参入阻止に大きく貢献しました。

両事業の成功の一助となったのは、「顧客価値起点での先行開発」と「タイムリーかつ包括的な知財網創成」を事業部門・開発部門・知財部門が一体となって進めたことであり、これがインダストリー事業における勝ち筋として確立され、継承されています。

現在のインダストリー事業の知財戦略

センシング事業部においては、コア技術を起点として主要顧客のニーズを的確につかんだ先行的技術開発とタイムリーかつ戦略的な特許出願を行い、自社事業の優位性を確保しています。特に、将来の事業構造を想定した出願国の選定や、ハイパースペクトルカメラ等の新規導入技術と既存アセットとの融合により新市場を先取りする知財活動を遂行しています。

SPECIM

機能材料事業部では、ディスプレイ領域で培った材料・溶液製膜・光学設計の知見を基盤に、サプライチェーン上の顧客価値を統合し、新商材を創出しています。さらに、競合動向および顧客生産国を前提条件として、設計段階から多面的な先行出願を行い、グローバル展開を想定した特許網を構築することで、事業の競争優位性を確保しています。
インクジェットコンポーネントや光学コンポーネント事業においては、ペロブスカイト太陽電池や半導体の製造工程等における技術課題に対して、当社のコア技術を活かしたソリューションを提供できるような新規技術開発と知的財産の確保を連動して推進しています。

VOICE

常務執行役 インダストリー事業管掌 葛原 憲康

インダストリー事業では、特許網により保護されたコア技術を基盤とし、「現場力」による顧客との共創を通じて、製造業などの産業で欠かせない部材や計測・検査機器・サービスを提供することで、顧客の事業価値およびサステナビリティ価値の向上に貢献しています。

画像ソリューション事業における知財活動

画像ソリューション事業は、当社が長年培ってきた光学・画像処理技術を基盤に、ハードウェア・ソフトウェア・AIを統合し、医療・産業・社会インフラ領域へ「見える化」と高度な意思決定支援を提供しています。中期知的財産計画(2023~2025年度)に基づき、将来の競争力の源泉となるコア領域において重要特許60件超を核とする特許ポートフォリオを形成し、周辺・応用領域でも多数の特許出願・権利化を計画的に積み上げることで、自由実施領域の拡張と参入障壁の多層化を戦略的に進めています。

ヘルスケア事業

当社は、X線フィルム時代から蓄積してきた技術と事業基盤を活かし、デジタルX線診断システムや超音波診断装置などの医療用画像診断装置(モダリティ)や、医療用画像保管・転送システム(PACS)などの医療ITサービスを提供しています。中でも独自技術である「X線動態」は、血流・呼吸・関節などの「動き」を低線量のX線で可視化できる点が大きな強みであり、その根幹となる動態画像解析技術や、集中治療室や一般病棟で動態撮影を可能にする動態回診車を中心に、世界で300件を超える特許ポートフォリオを構築し当社の競争優位性を維持し、動態撮影分野をリードしています。

X線動態

知財戦略の実行にあたっては、特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」制度を活用し、審査官への対面説明を通じて技術の独自性と事業適合性を直接訴求することで、重要技術の確実な権利化を実現しています。
また、特許権のみならず、「X線動態」を当社の登録商標(商標第6713842号)として確保し、積極的な使用を通じて市場浸透を図ることで、顧客の混同防止とブランドの識別力を維持し、事業価値の最大化に取り組んでいます。

画像IoTソリューション事業

当社独自のセンサーデバイスによる画像取得・画像処理技術にAI・IoTを融合し、製造・物流・社会インフラなどの現場における安全性向上・生産性改善・業務効率化を実現するソリューションを提供しています。画像データを活用して現場の状況や人・物の挙動を定量的に把握することで、顧客課題の解決に直結する価値を提供します。
特に、人の行動解析を支える汎用的な画像AI技術として、人の動作検出と行動推定を行う技術(特許第7271915号)、複数人の行動を属性と関連づけて解析する技術(特許第7563662号)など、将来の事業展開を支える基盤となる特許ポートフォリオの形成を着実に推進しています。
また、独自開発のハンディ型ガス検知カメラを活用したガス監視ソリューションでは、プラント設備のガス漏れを定量化する画像処理技術(特許第6245418号)をはじめ、需要の高いアプリケーションを軸とした特許権の確保を積極的に進め、当社のコア技術保護と事業拡張につながる知財基盤を強化しています。

QOLソリューション事業

超高齢社会が直面する介護・福祉分野の構造的課題に対し、介護現場のDXを通じて、介護を受ける人と支える人双方の生活の質(QOL)向上に貢献する、見守り・介護業務支援サービス「HitomeQ(ひとめく)ケアサポート」を提供しています。
介護施設入居者の行動を高精度に検知する画像解析技術(特許第6115692号)などを活用し、介護施設の職員の業務効率化と入居者の安心・安全を同時に実現しています。このような付加価値の高いソリューションの提供につながる技術を、戦略的かつ包括的に知的財産権で保護し、事業上の優位性を維持・向上する取り組みを積極的に進めています。

VOICE

執行役 画像ソリューション事業管掌 吉村 裕介

画像ソリューション事業では、独自ハードウェア×AIで価値を創出しており、X線動態・ガス監視など様々な事業において、当社の競争力を維持・強化するための特許ポートフォリオの構築を戦略的に進め、市場創成・技術普及に知的財産を積極的に活用しています。