特集

知財人財戦略

会社は常に変革を進めており、この変革のスピードに対応できる人財が求められています。
当社では「知財活動を支えるのは人財」との考えから、知的財産組織・機能の強靭化と、知的財産を生み出す基盤の維持・向上の観点で、人財教育プログラムの構築やスキルアップ支援の充実を図り、新たな価値の創造を牽引する人財の育成に取り組んでいます。

知的財産組織・機能の強靭化

当社は、「①専門知識を備え、専門知識を事業活動に活かすスキルを備えること。②事業・経営の視点をもって変革のスピードを捉え、企画・提案・グローバルな組織運営と遂行能力をもつこと」を知財活動を推進する人財像として掲げています。この人財像に向けて、知的財産部員として必要な知識・スキルの棚卸をしており、これらのうち、不足もしくは強化すべきものの取得や多面的な視点・考え方の強化のため、海外駐在や知的財産部門内もしくは他部門とのジョブローテーション、社内外の研修や外部団体への参加などを施策として実施しています。「知的財産戦略2017-2022」に基づく人財戦略の推進により、海外ロースクールへの留学及び研究開発部門、経営部門、IR室などへのジョブローテーションの経験者や社外組織での活動経験者は、2021年度には知的財産部門全体の42%(図4)を占めており、知的財産部門の人財育成が着実に進行しています。

図4. 知的財産部門の人財多様化

知的財産を生み出す基盤の維持・向上

また、知的財産部門の組織・機能強化としての人財戦略と並行して、全社の知的財産リテラシー向上を目的とした教育(コニカミノルタカレッジ)、法律改正やAI・DXに関連する知的財産についての知財教育など、社会環境の変化で必要となる教育をタイムリーに実施しています。当社の知的財産は各事業部門の研究開発活動やパートナーとのアライアンス・お客様との関わりの中から創出されます。従って、研究開発部門だけでなく営業部門などアライアンス・お客様との接点となる当社社員一人ひとりが知的財産の活用やマネジメントの知識を持つことが求められます。そこで、当社ではコニカミノルタカレッジにて、知的財産に関する基本的な法律や手続きに関する講座から知財マネジメントに関する講座まで、必要な時期に必要な教育を受けることができるよう機能別の多彩なプログラムを提供しています(図5)。このような知財教育は、開発拠点をもつグループ会社に対しても実施しており、ワールドワイドでの知的財産基盤の強化を図っています。

図5. 機能別の知財教育プログラム

知財業務のDX

当社は、知財業務・プロセスのDXの取り組みにおける目指す姿として、「知財戦略の高度化・実効性向上」と「知的財産権の質向上」の2つのビジョンを掲げています。データとデジタル技術を活用拡大し、知財インテリジェンス機能強化などを通して知的財産の価値最大化を推進していきます。

DXの推進

2021年度は、上述したビジョンの実現に向けて、AIを活用して、情報収集・集約の効率化と取得した情報を分析に適した形へと可視化することに注力し、知財業務のDX推進を図りました(図6)。

図6. DX推進方針

従来から取り組んできたオペレーショナル知財業務の自動化、データや情報収集の自動化の拡大・定着により、知財業務やその執行状況の管理にかかる負担が劇的に削減されており、それに伴い、データアナリティクスを軸とした、高付加価値業務へのシフトを進めています。知的財産権の価値の現状把握、特異点の抽出及び傾向予測ができるように表示設計を行うなど、収集したデータの可視化を進めたことにより、イノベーションの創出支援や知財ポートフォリオ構築などにおける課題の早期発見などにつながっており、データアナリティクスの高度化が着実に進行しています(図7)。この可視化された情報を活用して、経営層や研究開発部門とのさらなるコミュニケーションの活性化にも努めています。また、情報の可視化・分析視点の豊富化が進むことで、結果としてIPLなどの知財インテリジェンス機能・体制の強化にもつながっています。当社は、知的財産部門だけでなく、全社的な知財業務の効率化をサポートする取り組みにも注力しています。2021年度は、特許調査の効率を高める取り組みを行いました。具体的には、利用者が特許調査で活用していた複数のツールにある情報をワンストップで提供するとともに、調査結果の品質担保のため、利用者が入力する検索条件の適切さを評価するアプリケーションを開発しました。このアプリケーションを社内で展開し、社員の行う特許調査の品質向上と効率化の支援を行いました。本取り組みは社内の称賛事例として、2022年度のグローバル表彰制度で取り上げられました(Konica Minolta Awards*)。これにより、さらに全社的に理解が深まることで知財DXの認知が高まり、成果が活用される環境の醸成が進んでいます。

* 関連情報:
グローバル表彰制度(Konica Minolta Awards)
https://www.konicaminolta.jp/about/csr/social/human-capital/communication.html

図7. 知財業務・プロセスの変革に向けたAI活用