特集

社会課題の解決に寄与する知的財産

グローバリゼーションによる世界経済の発展が進むなかで地球環境問題に代表される社会課題は多様化・複雑化しており、その解決には高度なイノベーションが必要とされています。当社は、絶え間ないイノベーションにより新たな顧客価値を創出し、その過程で得られた技術やノウハウ等の知的財産を活用することによって、競争優位性の維持・強化を図るとともに、当社が取組む「5つのマテリアリティ」の追求を通じた社会課題の解決を目指しています。

特許から見る当社の社会課題の解決力

当社は、顧客接点、技術、人財をはじめとする無形資産を活用して、様々な社会課題の解決に取り組んでいます。技術に内包される知的財産についてはその一部は特許出願され、公開されることから、社会課題解決への取り組み状況の一端は、開示されている特許情報から可視化することができます。持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)で規定される169のターゲット定義文に基づいてSDGsの目標に紐づく当社の日本登録特許を特定すると、2000年以降その登録件数は増加の傾向にあり、特にSDGsの目標8(働きがいも経済成長も)や目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)に対応する技術を数多く蓄積してきました。当社が2020年に保有していた日本登録特許ポートフォリオにおいては44%がSDGsの目標に紐づく特許群であり、そのうち42%がSDGsの目標8に分類されます。大部分が当社のマテリアリティ「働きがい向上及び企業活性化」の課題解決を支援する自動化、ユーザービリティという観点の特許群であり、デジタルワークプレイス事業とプロフェッショナルプリント事業におけるソリューションの競争力維持・強化に貢献しています。これら特許資産は、価値創造プロセスに組み込まれ、当社の5つのマテリアリティを軸とした事業活動の推進力となり、将来的な社会課題の解決に寄与しています。

図7. SDGsの目標8及び目標9に紐づく当社の日本特許の登録件数推移(2000年を1とした指数)
※分類には、SDGs169のターゲット定義文を用いてIPC(特許分類)とキーワードを組合せた検索式を使用。
図8. SDGsの17の目標別構成比 

環境問題解決への取り組み

当社は知的財産領域におけるSDGsへの取り組みの一環として、国連の世界知的所有権機関(WIPO)が運営する環境技術の活用を促進するためのプラットフォームである「WIPO GREEN」にパートナー企業として2019年度に参画しました。2020年度は安全性向上や長寿命化の次世代技術として注目を集める「全固体アルカリ金属二次電池に関する特許群」と、高い発熱効率によって大きな省エネルギー効果を実現する「面状発熱体に関する特許群」等、20を超える環境技術特許を追加登録しました。これら特許群の開放によって地球規模の緊急課題である環境問題の解決に向けたグリーンイノベーション創出を支援していきます。

戦略を支える知財業務のDX

当社は、「イメージング」技術をはじめとする無形資産を基盤として、デジタルの力で事業を変革すること(デジタルトランスフォーメーション:DX)によって、高付加価値サービスを主体としたビジネスモデルへの業容転換を図り、企業としての成長と社会課題の解決の両立に取組んでいます。知財業務においても、各事業の競争優位性の確立と、持続的な成長につなげるべく、データとデジタル技術を活用することで知財業務・プロセスの変革を推進しています。

DX推進のビジョン

知財業務・プロセスのDXの取り組みにおける目指す姿として、「知的財産戦略の高度化・実効性向上」と「知的財産権の質向上」の2つのビジョンを掲げています。

図9. DX推進方針

2020年度は、知的財産戦略の高度化・実効性向上に向けた取り組みとして、知的財産部門のオペレーショナル業務や情報収集の自動化を進め、業務環境の整備を推進してきました。これにより知的財産部門においては、事業収益性向上に寄与する付加価値業務(知的財産権の質の向上、重要知的財産の権利化、知財ソリューションの提供等)へのシフトが加速しています。
知的財産部門のDX推進の取り組みで蓄積した知見は、他の部門における知財関連業務・プロセスにも展開・適用しています。

取り組み事例

<オペレーショナル業務の自動化>
 特許出願ワークフローの一部にRPA (Robotic Process Automation)を導入し、知的財産部門のオペレーショナル業務において、年間200時間以上に相当する工数の削減を実現しました。

<情報収集の自動化>
IPランドスケープを駆使した知的財産戦略の構築にあたっては、競合他社や関連市場を調査・研究することも必要であると考えています。そのため、知財情報はもちろんのこと、新製品情報や市場トレンドといった一般情報の確認が不可欠です。知財情報についてはITツールを活用することによって、必要な情報を自動的に収集するシステムを開発しました。一般情報についてはweb情報の収集・選定にRPAを活用することで、膨大な量の情報から有用なものだけを自動的かつタイムリーに収集する仕組みを構築しました。必要な情報が簡単に即時に確認できるようになったことで、これら情報を用いた知的財産戦略の構築に、より多くのリソースを充てることが可能となり、知的財産戦略の高度化が進みました。

<知財費用管理の高精度化>
知財費用については、長年、精度の高い予実管理は困難であるという課題を抱えていました。特許や商標では出願時、権利化対応時、権利維持費用支払時等のタイミングで費用が発生しますが、取り扱う件数が多く、また案件毎にそれらのタイミングが異なるためです。そこで当社は出願から権利満了までの経緯データの統計的な分析結果を活用して、年度での知財予算を算出するシステムや、四半期単位で費用発生タイミングを予測するシステムの開発を行い、費用の予測精度を向上させました。また、リアルタイムに費用実績を集計・確認できるシステムも構築し、これら一連のシステムを組み合わせて四半期毎の精度の高い予実管理を実現しました。