CEOインタビュー
経営改革から、
長期成長の礎構築へ―
ROIC経営を軸に、
事業ポートフォリオ
マネジメントを
強化します
取締役 代表執行役社長 兼 CEO
大幸 利充
中期経営計画(2023-2025)の振り返り
Q社長就任からの4年間をどう総括されますか。
2022年4月、私が社長に就任した当時、当社は3期連続の最終赤字という厳しい経営状況にありました。こうした状況の中、最優先課題は赤字経営からの脱却であり、その実現に向けた経営改革を断行することに、私の判断の迷いはありませんでした。
中期経営計画(2023-2025)(以下、前中計)では、すべてのビジネスユニットを「強化事業」「収益堅守事業」「方向転換事業」「非重点事業」の4つに分類し、ベストオーナーの観点から「事業の選択と集中」を進めました。「非重点事業」については第三者資本の活用を進め、プレシジョンメディシンやマーケティング・プリント・マネジメント(MPM)サービス事業の譲渡などを行いました。また、「方向転換事業」について、DW-DXユニットでは展開地域やサービス領域を見直し、画像IoTソリューションユニットではMOBOTIX社株式を譲渡しました。「収益堅守事業」のオフィスユニットを中心とする情報機器事業では、今後の生産効率の観点から中国・無錫工場での生産を終了し、マレーシア、日本、中国・東莞に生産拠点を集約しました。加えて、富士フイルムビジネスイノベーション社と合弁会社を設立して原材料および部材の調達体制の構築を進めました。さらに、前中計の策定時には計画していなかった「グローバル構造改革」を将来を見据えた追加施策として実行し、収益基盤の強化に取り組みました。
こうした経営改革に取り組むとともに、「強化事業」のインダストリー事業についても成長基盤の強化を進めました。主にセンシングユニットにおいて顧客による設備投資抑制などの影響を受け、当初想定していた売上成長には至りませんでしたが、需要の回復の兆しが見え、事業全体としても回復基調にあります。また、半導体検査装置用光学コンポーネント、ペロブスカイト太陽電池用バリアフィルム、インテリジェント再生材など、将来の「成長の芽」に向けた基盤構築も着実に推進しました。これらの結果、最終年度の2025年度には収益力を回復することができ、ROE(自己資本利益率)も6.1%まで改善し、当初目標の5.0%を上回ることができました。
前中計期間は、厳しい経営判断を伴いながらも、取り組むべき方向性を明確にし、従業員の理解と協力を得ながら、全社一丸となって施策を着実に実行した3年間だったと総括しています。
前中計の位置づけ

Q前中計で積み残した課題や、引き続き取り組むべき課題を
どのように認識されていますか。
どのように認識されていますか。
経営改革の推進により、収益力は着実に回復・拡大していますが、資本市場が期待する水準にはまだ到達しておらず、成長スピードの向上は引き続きの課題です。また、産業印刷ユニットについては米国関税の影響などによる市場環境の悪化を受け、収益性が低下しました。中長期的な市場成長を見据え、こうした成長事業の拡大を一段と加速するとともに、収益力の一層の強化を重要な経営課題と認識しています。
また、組織的な側面に目を向けると、自ら限界を設け、それが成長の制約になっている面があると感じています。「自分たちは精一杯取り組んでいる」「過去と比べて改善している」といった社内基準だけで判断するのではなく、重要なのは「競合と比べてどのような水準にあるのか」「お客様、社会、そして資本市場は当社に何を期待しているのか」という外部視点を常に起点として、行動を変えていくことです。継続的な企業価値向上のためには、まずは私が中心となり、経営陣自らが率先して変革し続ける覚悟を持つことが不可欠です。こうした意識改革と企業文化の変革を全社で徹底し、挑戦と変革を続ける組織へ進化させることも、今後の重要な経営課題であると認識しています。
中期経営計画
Corporate Plan 2026-2028 の狙い
Q中期経営計画Corporate Plan 2026-2028(以下、新中計)の位置づけを
「長期成長の礎構築」と定めた理由をお聞かせください。
Corporate Plan 2026-2028 の狙い
「長期成長の礎構築」と定めた理由をお聞かせください。
前中計において、「事業の選択と集中」や「グローバル構造改革」による経営改革を進めた結果、ROE目標を達成することができました。しかし、企業価値の持続的な向上に向けて収益力のさらなる強化が必要です。そこで、新中計の3年間を「長期成長の礎構築」の期間と位置づけました。ROIC(投下資本収益率)を軸とした経営判断を徹底するとともに、事業ポートフォリオマネジメントを一層強化し、資本効率向上と成長の両立を図っていきます。また、中長期の持続的な成長に向けて、「成長の芽」と位置づける新しい事業についても、技術と顧客価値の検証を着実に進めながら事業化を推進し、将来の収益の柱としていきます。
ROICを軸とした事業ポートフォリオマネジメント

Q事業ポートフォリオマネジメントの方針を教えてください。
新中計では、各事業のROICと売上高成長率の目標水準および方向性を定めています。評価基準として、2028年度時点で想定するWACC(加重平均資本コスト)6%をハードルレートとし、売上高成長率については全社平均の3%を基準としています。
オフィスユニットは市場縮小を織り込んだ計画としていますが、インダストリー事業やプロフェッショナルプリント事業は全社平均を上回る成長を見込んでいます。このうちROICと売上高成長率の双方で基準を上回るインダストリー事業は、今後の全社成長をけん引する中核事業として重点的に強化します。またプロフェッショナルプリント事業のプロダクションプリントユニットは高いROICを維持し、商業印刷のデジタル化の成長機会を有しています。競争優位性をさらに強化しながら、売上拡大と収益成長を追求していきます。
これまでもROICを活用した事業評価を行い、毎年の事業点検に加え、3年単位で事業のあり方を見直してきました。新中計では、環境変化への対応力を高めるため、四半期単位で進捗を管理し、計画に遅れが生じている事業については早期に改善策を講じます。中長期的な市場動向や競争環境なども踏まえて判断する必要がありますが、それでも改善が見込めない場合には、商材や地域を含めた事業領域の絞り込みなど、事業戦略の見直しも行います。
実際に2026年度第1四半期には、画像IoTソリューションユニットについて商材・サービスごとの見直しを行い、シナジー創出が見込める事業への移管や、一部商材・サービスからの撤退などを順次実行しています。
こうしたROIC経営の考え方を全社に浸透させるため、ROICツリーを活用し、各部門が取り組むべき施策やKPIを明確化しています。現場と経営が一体となって資本効率と成長性の向上に取り組み、持続的な企業価値向上につなげていきます。
Q新中計の発表後には株価が軟調に推移する場面も見られました。
2028年度に掲げる経営目標に対する資本市場の評価や期待についてどのように受け止めていますか。
2028年度に掲げる経営目標に対する資本市場の評価や期待についてどのように受け止めていますか。
新中計では、金利上昇にともない資本コストが高まるなか、企業価値向上に向けた最重要目標としてROE8%を掲げました。そのうえで、売上高CAGR3%、事業貢献利益率6.5%、当期利益率3.8%、全社ROIC6%を2028年度の経営目標として設定しています。これは、当社が確実に達成すべき水準として設定したものですが、資本市場からは、特に主力事業であるデジタルワークプレイス事業の利益水準に対し、物足りないとの厳しい意見も寄せられました。
当社には、過去に高い目標を掲げながら計画未達に終わり、資本市場からの信頼を損ない、従業員も大きく疲弊した経験があります。その反省を踏まえ、まずは着実に成果を積み上げることを重視しました。今後は、単に目標を達成するだけではなく、前倒しで達成し、期待を上回る成果を創出することで、資本市場からの信頼と評価の向上につなげていきます。継続的な実績の積み重ねこそが、企業価値向上への期待を高めるものと考えています。
Q資本市場においては、オフィスユニットの将来性や持続的な収益性に関して
懸念する見方がありますが、どのようにお考えですか。
懸念する見方がありますが、どのようにお考えですか。
オフィスユニットの将来を考えるうえで重要なのは、今後の働き方やオフィス環境の変化をどのように捉えるかです。現在、AIの活用による業務プロセスのデジタル化の拡大が見込まれ、プリント需要の減少が一段と加速する可能性があります。影響を見通すことは容易ではありませんが、変化が明確になってから手を打つのでは遅すぎます。AIの浸透が想定以上に早く進み、業務プロセスが大きく変化することを前提として、対策を講じて事業の将来に最適な戦略を判断していきます。
すべて自前だけで続けるのか、パートナーとの協業を通じて競争力や資本効率向上を図るなど、あらゆる選択肢を検討していきます。重要なのは、環境変化に受け身で対応するのではなく、自ら変化を見据えて最適な戦略を描くことです。そのうえで、まずはオフィスユニットの収益力を徹底的に磨き、環境変化の中でも持続的にキャッシュを創出できる事業基盤にしていきます。また、中計策定時には織り込んでいなかった米国関税還付のようなプラス要因を活用しながら、収益性改善に向けた施策の前倒しを図ります。
Q収益性向上に向けては、どのような取り組みを計画していますか。
AI活用による付加価値の向上は全事業において目指しています。それに加えて、例えば、情報機器事業においては、これまで進めてきたAI活用をさらに進化させ、AIトランスフォーメーションによるビジネスプロセス革新を推進し、業務の高度化・効率化を通じて業界最高水準の生産性を実現します。
また、全社的な収益力強化に向けて、地域軸での事業横断的な機能最適化を進めます。これまで当社は事業単位のガバナンスを中心としてきましたが、今後は地域ごとに業務プロセスや機能の共通化、間接業務の集約を進めることで、経営効率の向上とコスト構造のスリム化を図ります。こうした取り組みにより、より強固で継続的に利益を創出できる収益基盤を構築します。
中長期的な成長戦略
Qインダストリー事業の強化方針について教えてください。
当社では、インダストリー事業を中長期の成長をけん引する中核事業と位置づけています。新中計では投資水準を従来以上に拡大し、半導体検査装置用光学コンポーネント、ディスプレイ用新素材フィルムの「SANUQI」「SAZMA」、自動車外観検査システムなど、将来の成長ドライバーとなる領域へ経営資源を重点的に配分していきます。
なかでもセンシングユニットは、大きな拡大余地を有する事業と考えています。例えば、ペロブスカイト太陽電池用バリアフィルム、インテリジェント再生材、バイオものづくりなど当社が「成長の芽」と位置づける多くの領域で、センシングのハイパースペクトルイメージング(HSI)の技術が活用されています。今後、モノづくりの高度化が進むなかで、センシング技術の活用領域はさらに広がると考えています。
これまでセンシングユニットでは計測機器の開発・製造・販売を中心に展開してきましたが、今後はハードウェアの提供にとどまらず、計測技術とAIを組み合わせることで、顧客の品質向上や生産性向上に貢献するソリューション事業への転換を加速していきます。将来的には、“計測機器事業”から“計測事業”への真の進化を目指しています。その実現に向けて、2026年度には技術開発本部内に「アドバンストセンシング推進室」を新設し技術開発の強化を進めます。
また、組織や地域、事業の枠を越えて、技術・人財・顧客接点などを結集することで、新たな価値創造と事業成長の実現を加速させていきます。
インダストリー事業の成長を牽引する製品群

Q「成長の芽」をどのように成長させていく方針ですか。
当社は、「材料」「光学」「画像」「微細加工」の4つのコア技術にAI・データサイエンスを掛け合わせることで、サーキュラーエコノミーや脱炭素・GX(グリーントランスフォーメーション)などの成長領域へ事業を拡張していきます。
とりわけ将来の利益成長をけん引するドライバーと位置づけているのが、半導体検査装置用光学コンポーネントです。半導体検査装置市場は、AI関連需要だけでなくレガシー領域を含めて用途拡大が続いており、現在の半導体需要を牽引しているAIデータセンターが一巡した後も中長期的な成長が見込まれます。加えて、高成長が見込めるDUV領域向け製品についても、2027年度の量産開始を予定しています。
また、GX分野では、エネルギー安定供給への関心が高まるなか、ペロブスカイト太陽電池への注目が高まっており、その主要部材であるバリアフィルムの需要が見込まれています。当社は、有機EL照明で培ったハイバリアフィルム技術に加え、インクジェットヘッド、HSIなどの技術も活用し、社会実装に貢献していきます。
さらに、インテリジェント再生材は、高度な材料選別技術や独自のセンシング技術とAIを活用して、再生プラスチックの品質安定化と製造・成形条件の最適化を実現するソリューションです。現在、再生材の製造・供給に強みを持つMJマテリアルテクノロジー社との協業のもと、同社のマレーシア工場での量産化に向けた検討を進めています。
これらの「成長の芽」については、成長ステージに応じた段階的な投資を行い、本格的な利益貢献は2029年度以降になると考えています。将来の企業価値向上につながる事業として着実に育成していきます。
経営理念とコア技術

さらなる企業価値の向上に向けて
Q企業理念「新しい価値の創造」を、どのように具現化していきますか。
「新しい価値の創造」は、2003年のコニカミノルタ発足以来、不変の経営理念です。これまでオフィスプリントのデジタル化・カラー化や、フォト・カメラ事業で培った技術を活用したディスプレイ用機能材料フィルムなど、時代に求められる新たな価値を生み出してきました。しかし、2015年以降は新たな事業の柱の創出を目指し、プレシジョンメディシン事業などの大型買収にも挑戦しましたが、事業ポートフォリオを見直すなかでベストオーナーの観点から譲渡を決断しました。近年では、X線動態解析システムやデジタル印刷機搭載の自動品質最適化ユニット「IQ-501」など独自性の高い技術を生み出してきましたが、過去と比べると事業として大きくスケールするまでに時間を要しています。次の10年、15年を見据え、社会課題の解決に貢献すると同時に、持続的な成長を実現する新たな価値を創出することは、私が重視する経営課題の一つです。
その実現に向けては、世の中の変化を先取りし、新たな事業機会を発掘する力が不可欠です。当社では、技術・ビジネスへの感度の高い人財を選抜し、既存組織の枠を越えた自由な発想、これまでとは違う視点から新たな事業テーマの探索を進めています。さらに、2025年4月からは私を含む役員が担当者を交えて新事業テーマを毎月レビューする仕組みを導入しました。担当者と直接議論することで、有望テーマへの迅速な支援や、撤退判断を機動的に行える体制としています。今後、社外の知見も取り入れながら、事業性や将来性をより客観的に評価できる仕組みへと発展させていきます。
また、私は社長就任後、多くの事業場を訪れ、従業員との対話を重ねるなかで新たな気づきを得てきました。前述の半導体検査装置用光学コンポーネントも、そうした現場での対話から事業化の重要性を再認識した事例の一つです。
新たな価値創造に挑戦すると同時に、定量的な基準のもと資本効率を意識した規律ある投資判断を徹底し、社会価値と企業価値の双方の向上を実現していきます。
Qサステナビリティ経営と事業成長の考え方について教えてください。
お客様や社会の課題解決を通じて価値を創出する当社にとって、成長戦略の推進そのものがサステナビリティ経営の実践です。前述した「成長の芽」も、「気候変動への対応」「有限な資源の有効利用」といったマテリアリティに深く関わる事業テーマです。
気候変動への対応については全社的な取り組みを強化しており、2025年には製品ライフサイクル全体におけるCO₂排出量を上回るCO₂削減貢献量を実現し、当社が定義する「カーボンマイナス」を達成しました。この取り組みをさらに進化させ、2050年には、製品ライフサイクル全体でのCO₂排出量ネットゼロの実現を目指しています。
また、マテリアリティについても継続的に議論を行い、新中計との整合性や各事業の重点領域との連動性についても改めて確認しています。今後、社会環境や事業環境の変化も踏まえながら、当社が取り組むべき重要課題のあり方について検討を深めていきます。
共創によるサステナビリティ貢献と事業成長の両立

QPBR1倍割れの現状について資本市場から厳しい目が向けられています。
今後、どのようにPBR向上を実現していきますか。
今後、どのようにPBR向上を実現していきますか。
PBR1倍割れは、当社の資本効率や成長性に対する資本市場の評価を反映したものであり、経営トップとして真摯に受け止めています。
当社はROE8%の達成を目標としていますが、これはあくまで通過点であり、中長期的にはROE10%以上を目指す必要があります。そのためには、収益性の向上に加え、運転資本の適正化や資産効率の改善を通じた総資産の効率的な活用が不可欠です。また、経営と株主との利害を一致させる観点からTSR連動型の役員報酬制度を導入し、株主価値向上に対するコミットメントを一層強化しました。こうした取り組みを通じて、PBR1倍超の早期達成を目指すとともに、市場から適正に評価される企業価値の実現を目指していきます。
これからの3年間を企業価値向上に向けた重要な期間と位置づけ、資本市場の期待に実績で応えていきます。ステークホルダーの皆様には、引き続き一層のご支援を賜りますようお願い申しあげます。
中長期の企業価値向上に向けて
